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台湾での日本からの麻疹輸入例の報告[感染症今昔物語ー話題の感染症ピックアップー(47)]

登録日: 2026.06.01 最終更新日: 2026.06.01

石金正裕 (国立健康危機管理研究機構国立国際医療センター国際感染症センター/AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

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●麻疹とは1)

麻疹は麻疹ウイルスによる感染症で,近年は海外からの輸入症例が中心でしたが,2026年4月頃より国内発生も増加傾向を認めており,大きな問題となっています。世界では途上国を中心に,いまだに5歳以下の乳幼児の主な死亡原因となっています。

空気感染が主で,飛沫感染・接触感染もあります。感染力はきわめて強く,免疫を持たない人が感染者に接するとほぼ100%感染します。感染力が最も強いのは発疹出現前の時期で,発症日の1日前から解熱後3日間が他人に感染させうる期間とされています。潜伏期間は約10〜12日で,最初に38℃程度の発熱とかぜ症状が2〜4日続き,その後39℃以上の高熱と発疹が現れます。合併症として肺炎・中耳炎・脳炎などがあり,先進国でも1000人に1人が死亡するとされています。また,感染から数年〜十数年後に亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis:SSPE)を発症する場合もあります。

特別な治療法はなく対症療法のみのため,ワクチン接種(最低2回)による予防が最も有効です。一度感染・発症すると一生免疫が持続するとされています。 

感染症法では5類感染症(全数把握対象)に指定されており,診断した医師は直ちに保健所へ届け出る義務があります。

●台湾では,日本からの輸入麻疹確定症例が報告2)

台湾CDCは2026年4月28日,台湾で新たに海外からの輸入麻疹確定症例が1例確認されたと発表しました。患者は台湾中部在住の30歳代男性で,4月上旬に日本へ旅行し,帰国後の4月16日に発熱や咳などの症状が現れ,複数回医療機関を受診しました。4月20日に発疹が出たため再度受診し,保健当局が通報を受けて検査を行った結果,陽性が確認されました。保健当局は,関連する接触者274人を特定しており,5月12日まで経過観察を行う予定となっています。

台湾CDCによると,今年,台湾で報告された麻疹の累計症例数は9例で,年齢は1歳未満から50歳代までです。このうち2例は国内感染例,残り7例は海外からの輸入例であり,感染国はベトナム,マレーシア,米国,インド,インドネシア,キルギス,日本となっています。

また,日本における麻疹の感染状況について次のように言及されています。「日本の感染状況は増加傾向にあり,今年4月15日までの累計報告数は299例で,東京都,神奈川県,鹿児島県,愛知県,千葉県,埼玉県に多く分布しています。第15週の1週間だけで56例の確定症例が新たに報告され,その多くは東京都と神奈川県に集中しています」。

台湾CDCは,バングラデシュ,インドネシア,グアテマラ,メキシコ,ベトナム,インドなど11カ国に対し,旅行感染症注意報レベル「第2級:警示(alert)」を発令し,現地では予防対策を強化するよう呼びかけています。また,日本,マレーシア,米国,英国など34カ国を「第1級:注意(watch)」に指定し,現地の一般的な予防措置を遵守するよう注意喚起しています。

このように,他の感染地域と同様,日本における麻疹の感染拡大も他国に影響を及ぼしはじめています。

【文献】

1) 東京都感染症情報センター:麻しん. (2026年5月4日アクセス)

2) 台湾CDC:國內新增1例蔴疹境外移入確定病例 請民眾前往流行地區加強防護. (2026年5月4日アクセス)

石金正裕 (国立国際医療研究センター病院国際感染症センター/ AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

2007年佐賀大学医学部卒。感染症内科専門医・指導医・評議員。沖縄県立北部病院,聖路加国際病院,国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)などを経て,2016年より現職。医師・医学博士。著書に「まだ変えられる! くすりがきかない未来:知っておきたい薬剤耐性(AMR)のはなし」(南山堂)など。


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