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【識者の眼】「EBM、ガイドライン、AI⑤─AIの誤りとEBMの5つのステップの普遍性」名郷直樹

登録日: 2026.03.10 最終更新日: 2026.03.10

名郷直樹 (武蔵国分寺公園クリニック名誉院長)

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AIの発達に伴い、古典的な教科書の役割はますます小さくなるだろう。ガイドラインも、AIが利用する情報源のひとつへと位置づけが変わっていく。また、UpToDateやDynaMedのように頻繁に改訂されるエビデンスに基づく教科書も、AIの単なる参照先にとどまる可能性がある。

EBMの実践も、この変化から逃れることはできない。前稿(No.5317)で述べたように、「EBM」という言葉自体は死語になりつつある。しかし、EBMの5つのステップは依然として重要であり続けると私は考えている。AIがどれほど進歩しても、人間が誤るようにAIも誤る。人間の誤りをAIが補正するだけでなく、AIの誤りを人間が補正するという関係が不可欠である。その相互性が失われれば、「AIに聞けばよい」という態度は、「専門医の意見に従えばよい」というEBM以前の状態に逆戻りすることにほかならない。

EBMの5つのステップ(①問題の定式化、②情報収集、③批判的吟味、④患者への適応、⑤評価と改善)は、AI時代にも有効である。そもそもAIに問いかけるのは人間である。①で患者の問題を適切に定式化できなければ、AIに有効な質問はできない。②の情報収集はAIによって大幅に効率化されるが、その結果の吟味は医師にゆだねられる。③でAIが提示する情報を批判的に吟味し、④で医療として実践し、⑤でその妥当性を振り返る。この循環には、人間とAIの相互の吟味が不可欠である。AIがどこまで進歩しても、吟味の過程が不要になることはない。

EBM実践の背景には、「人間は間違える」という前提がある。誤りを最小限に抑えるための方法論が5つのステップである。では、AIは間違えないのか。そうではない。AIは人間のデータと言語を基盤としており、人間に似ている以上、誤りを完全に避けることはできない。人間もAIも間違える。この事実は、どれだけ強調しても足りない。

医学に限らず、「何を信じてよいかわからない」という声を耳にする。しかし、間違いのない情報は存在しない。したがって、情報を「信じる/信じない」という二分法でとらえるべきではない。著名な専門医の見解であれ、急速に進歩するAIの情報であれ、常に誤りの可能性がある。情報を信仰の対象にしてはならない。

名郷直樹(武蔵国分寺公園クリニック名誉院長)[EBM][ガイドラインAI

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