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【識者の眼】「EBM、ガイドライン、AI④─EBMが広まらない時代のガイドラインとAI」名郷直樹

登録日: 2026.02.04 最終更新日: 2026.02.04

名郷直樹 (武蔵国分寺公園クリニック名誉院長)

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EBMの教育は、以前(No.5307)にも書いたように、いまだほとんど普及していない。30年経っても普及しなかったという事実は、今後も大きく普及することはない、ということを示しているのだろう。EBMという言葉自体も、既に死語になりつつある。しかし、それはそれで、新たな時代への一歩なのかもしれない。

一方で、EBMが普及しなかったのとは対照的に、ガイドラインやAIの普及は目覚ましい。診療現場では、医学論文を自ら読むという行為はますます少なくなり、既にガイドラインやAIの活用が主流になりつつある。今後は医学教育への導入も、急速に進む可能性が高い。患者側においても、ガイドラインやAIを活用する動きは確実に広がっていくだろう。この流れを止めることはできないし、この流れの中で診療や医学教育のあり方を考えていくことが、今後の王道になるはずだ。

こうした現状をふまえ、今後の医療現場がどのように変化していくのかを考えてみたい。まず、ガイドラインそのものの作成が、AIによって部分的に代替されるようになるだろう。数年に一度しか改訂されなかったガイドラインが、毎年、あるいはそれ以上の頻度で改訂されるようになるかもしれない。さらに、これまで集団全体への一般的な推奨にとどまっていたガイドラインも、AIと組み合わせることで個別情報を反映し、患者一人ひとりに即した、より個別性の高い推奨を提示できる仕組みが実現する可能性がある。

もしAIだけで、一定数の患者対応が可能になれば、外来診療の負担は大きく軽減されるだろう。救急車による不要な搬送も、大幅に減らすことができるかもしれない。

また、ガイドラインやAIの進歩によって、短時間で質の高い、かつ個別性の高い情報を得られるようになれば、臨床医の業務負担は大きく減少する。その結果として生み出された時間を、自己学習や研究に充てることが可能になる。AIによって医師の仕事がなくなるのではないか、という議論もあるが、実際には診療に費やす時間を短縮し、自己学習や研究に使える時間が増えることで、臨床医の働き方改革も実現する可能性のほうが高いのではないか。さらに、ガイドラインやAIの普及は、都市部と地方の情報格差を縮める効果も期待できる。これらは総じて、非常に好ましい変化に思える。

加えて、AIによって生み出された時間を使い、日常的に研究を行う医師が増えれば、ガイドラインやAIの重要な情報源となる臨床研究が、数多く生み出されるようになるだろう。多くの臨床医が研究に関わることで、その成果が取り込まれ、ガイドラインやAI自体の質も、さらに高まっていくに違いない。

患者にとっても、ガイドラインやAIの進歩は、医師の負担を軽減し、自己学習と研究を重ねた医師が増えることで、日本のどこにいても、より質の高い医療を受けられるという可能性を広げるはずだ。

ガイドラインとAIの進歩によってもたらされる、こうした医療現場の変化を、私は半ば夢想している。

名郷直樹(武蔵国分寺公園クリニック名誉院長)[EBM][ガイドラインAI

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