薬事審議会の専門部会(再生医療等製品・生物由来技術部会)は2月19日、iPS細胞を用いた再生医療2製品の製造販売承認について審議し、「承認して差し支えない」との結論をまとめた。3月上旬にも正式に承認される。さらに企業からの申請、中医協での議論を経て保険収載される見通し。iPS細胞製品の実用化は世界初となる。
審議会で了承されたのは、阪大発ベンチャー企業のクオリプスが申請していたiPS細胞由来心筋細胞シート「リハート」と、住友ファーマが申請していたiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞「アムシェプリ」(国際一般名:ラグネプロセル)。
リハートは使用成績調査の実施、アムシェプリは製造販売後臨床試験と使用成績調査の実施などを条件に、7年を期限として承認される予定。
■重症心不全患者、パーキンソン病患者への有効性を確認
リハートの有効性評価は、重症心不全患者8例を対象に国内多施設共同非盲検非対照試験で行われ、8例中2例で心臓表面への移植後26週時点の心エコー図検査による左室駆出率(LVEF)の改善を達成、4例で移植後52週時点のピーク酸素摂取量(Peak VO2)10%以上増加を達成した。
アムシェプリの有効性評価は、パーキンソン病患者7例を対象に非盲検非対照の医師主導治験(治験責任医師:高橋良輔京大特定教授)で行われ、解析の対象となった6例中4例で脳内への移植後24カ月にMDS-UPDRS Part Ⅲ(パーキンソン病の運動症状を客観的に評価する臨床スケール)のオフ時スコアの改善がみられ、6例全例で移植部位である被殻への生着が確認された。
リハートは、安静時のLVEF35%以下の患者が対象となる。左心補助人工心臓の適用を検討する必要がある重篤な心不全患者は対象とならない。
アムシェプリは、運動症状を呈し、レボドパ含有製剤に対する忍容性・治療反応性を有する患者が対象となる。
■山中教授「社会実装へ向けた大きな一歩を踏み出せた」
審議会での了承を受け、京大iPS細胞研究所の山中伸弥名誉所長・教授は「マウスiPS細胞を発表してから20年という節目に、社会実装へ向けた大きな一歩を踏み出せたことを大変嬉しく思う。医療として確立するには、さらに多くの症例で安全性と有効性を確かめるプロセスが不可欠。浮足立つことなく、科学的な慎重さを持って、引き続き一歩ずつ着実に進んでいくことが重要だ」とコメント。
上野賢一郎厚労相は20日の記者会見で、3月上旬の承認を目指し、速やかに手続きを進める意向を示した上で、「承認されれば、山中教授が確立されたiPS細胞をもとに、日本の研究者・企業が開発した治療製品が世界で初めて実用化されることになる。官民投資を促進し、様々な支援を進めていきたい」と述べた。
「リハート」(ヒトiPS細胞由来心筋細胞シート)の概要
概要:ヒトiPS細胞から分化誘導させた心筋細胞をシート状に形成し、ゼラチンおよびHBSS(+)からなるゲルに包埋したヒトiPS細胞由来心筋細胞シート
効能・効果:薬物治療や侵襲的治療を含む標準治療で効果不十分な虚血性心筋症による重症心不全の治療
移植方法:心筋細胞シート3枚を心臓表面に順次移植。移植手術は左側開胸手術を基本とする
「アムシェプリ」(ラグネプロセル)の概要
概要:健康成人の末梢血単核球から作製したiPS細胞から分化誘導して製造したドパミン神経前駆細胞の細胞塊を含有する細胞加工製品
効能・効果:レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病患者の運動症状の改善
移植方法:非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞として片側当たり5.4×106個を目標として、定位脳手術により両側の被殻に移植。頭蓋骨の小孔1カ所を通る3つの投与経路から、1投与経路当たり約1.8×106個を1~2mm間隔で6~9カ所に分けて移植する。注入速度は約0.1μL/秒とする