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診断推論におけるノイズを制御するには①「取得する情報を制限する」

登録日: 2026.02.12 最終更新日: 2026.07.17

吉田心慈 (国立病院機構東京医療センター総合内科)

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臨床における「ノイズ」とは,診断においては「疾患の診断に直接的には関連しない情報」,マネジメント/経過観察においては「治療方針の変更や新たな介入につながらない,患者状態や検査データの変動」のことを指す。診断に寄与しない情報である「ノイズ」を制御するにはどうしたらよいのだろうか。既存の臨床推論における「フレームワーク」の解説を超え,「何を問題と定義するか」(フレーミング)について論理的・具体的・平易に解説した書籍『フレーミングでとらえる臨床推論』(吉田心慈著)から一部を抜粋・編集し,3回にわけて紹介する。(第2回はこちら)
関連記事:診断推論において情報量は多ければ多いほどよいのか?

これは,ある時間の断面で患者を切ったとき(たとえば,外来初診の診察時)にみられるノイズを減らす方法だ。次のようなケースを考えていく。

Case 
内科外来。既往のない20歳の男性が5日前からの発熱と咽頭痛・嚥下時痛で受診した。

経験の浅い医師は,ここから詳細な病歴とreview of systems→「頭から爪先までの」身体診察→陽性所見・陰性所見に基づいた鑑別診断の想起と検査,と進んでいく(研修医や専攻医が電子カルテに病歴や身体所見の「テンプレート」を作成して埋めていくところをよく目にする)。これ自体が間違いというわけではないし,テンプレートを埋めていくような診察の「型」は身につけたほうがよい。ただ,ノイズ制御の視点からはこれは悪手だ。

筆者なら次のように考える。

・この患者の主訴から,患者の問題は急性咽頭・扁桃炎(acute tonsillopharyngitis)と定義される可能性が高そうだ。
・とすれば,まずやるべきことはこの患者が急性咽頭・扁桃炎に合致する特徴を持っていることを確認しつつ,急性咽頭・扁桃炎をミミックする(あるいは急性咽頭・扁桃炎に合併する)“killer diseases”を除外することだ(鑑別リスト構築における“4C”(本書参照)の利用)。
・全身状態とバイタルサイン,気道の評価,咽頭所見の確認を手早くやって,この目標を達成しよう。
・急性咽頭・扁桃炎と確信できるなら,このフレーミングに沿った病歴と診察を追加しよう。
・急性咽頭・扁桃炎に関係しない病歴や診察は,急性咽頭・扁桃炎が否定されたら行おう。
・ ただし,このプロセスが「急性咽頭・扁桃炎がある」という確証バイアスに浸食されないように注意しよう。

仮にこの患者が急性咽頭・扁桃炎を持っているなら,それに関連のない病歴や身体所見上の異常はすべて(診断においては)ノイズであり,その取得は(診断においては)無価値,もっと言えば有害である。だから,急性咽頭・扁桃炎が最初の診察で否定された場合に限ってこれらの情報取得に手を出すようにする。

とりあえず診察を行う。患者は不快そうだが全身状態は安定し,体温以外のバイタルサインは正常範囲。stridorはなく,口蓋垂偏位や開口障害はない。咽頭発赤・両側扁桃腫大と白苔付着・両側頸部リンパ節の腫脹と圧痛がみられる。

急性咽頭・扁桃炎の所見が明確で,いわゆるkiller sore throatの所見はみられない。この患者に腹部症状や尿路症状を聞いたり,肋骨脊柱角(costovertebral angle;CVA)を叩いたりするべきだろうか。先述のように筆者の考えは否である。これらの聴取や診察で陽性所見が得られたとして,ではこの患者は腸炎だろうか?腎盂腎炎だろうか?違う。この患者は急性咽頭・扁桃炎の患者だ。

 実際,病院の救急外来セッティングでは,こういったケースで腹部圧痛があるとか,CVA叩打痛があるからと体幹部のCT撮影がなされていることもときどきある。これはさらにノイズを増やし診断を迷走させる行為だ。

この先行うべきは,漫然とテンプレートを埋めることではなく,「急性咽頭・扁桃炎としての」病歴と身体所見の深化だ。ノイズを減らすには,「鉱脈がありそうなところを掘る」ことが重要である。急性咽頭・扁桃炎の鑑別には細菌性(主に溶連菌),ウイルス性,非感染性(菊池病や成人スティル病など)がある。これら(のうち,頻度と経過から,特に感染性のもの)を意識して追加の情報を取得する。

小児との接触なし,3カ月前に付き合い始めた彼女がいる。頸部リンパ節腫脹は胸鎖乳突筋後縁に目立つ。肝脾は触れず,関節炎や皮疹はない。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2),インフルエンザウイルス,溶連菌の抗原検査は陰性であった。

ここまででEpstein-Barrウイルス(EBV)による伝染性単核球症を濃厚に疑う。血算,生化学でリンパ球増多,異型リンパ球の出現,肝機能異常を確認し,EBVの血清学的検査を提出するだろう。

このように,ノイズを減らすためには「最初にフレーミングに必要な情報を集め,早い段階でフレーミングを行い,以後は取得する情報をフレーム内の疾患に関連するものに限定する」という戦略での情報取得が望ましい。



(本稿は,吉田心慈『フレーミングでとらえる臨床推論』の一部を抜粋・編集したものです。)


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