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インドで発生したキャサヌル森林病のアウトブレイク[感染症今昔物語ー話題の感染症ピックアップー(43)]

登録日: 2026.02.03 最終更新日: 2026.02.24

石金正裕 (国立健康危機管理研究機構国立国際医療センター国際感染症センター/AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

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●キャサヌル森林病とは1)

キャサヌル森林病はフラビウイルス科に属するキャサヌル森林病ウイルスによって引き起こされる重篤なウイルス性疾患で,インド南部の森林地帯に風土病として存在します。主な流行地域はカルナータカ州などです。年間報告症例は約400~500例で,感染は主にダニの咬傷を介して成立し,感染動物(特にサルや齧歯類)との接触もリスク要因となります。ヒトからヒトへの感染は確認されていません。臨床的には,潜伏期は3~8日で,突発的な悪寒,発熱,頭痛を呈し,数日以内に筋肉痛,嘔吐,消化器症状,出血傾向を認めます。約10~20%の患者では二相性の病態を示し,精神障害,振戦,視覚障害などの神経学的症状が出現することがあります。血液検査によるウイルス学的確認により診断されます。

感染リスクは森林関連職業(狩猟者,牧畜民,林業従事者,農業従事者)で高く,流行地域を訪れる旅行者も注意が必要です。11〜6月の乾季に感染率が上昇します。予防としてDEET含有のダニ忌避剤使用,防護服着用,体調の弱っている動物や死骸との接触回避が推奨されます。

従来のワクチンは有効性や安全性の課題から3年前に廃止され,現在利用可能なワクチンは存在しません。特異的な抗ウイルス薬は存在せず,体液管理,酸素投与,血圧維持,二次感染対策などの支持療法が中心となります。死亡率は3~5%と報告されており,迅速な医療介入が予後改善に不可欠です。日本では感染症法の四類感染症で,診断した医師は,直ちに最寄りの保健所に届け出る必要があります。

●インドでキャサヌル森林病がアウトブレイク2)

2025年11月末以降,カルナータカ州西ガーツ山脈地域でキャサヌル森林病の早期発生が報告されました。最初の症例は11月29日に発生し,例年の季節ピーク(1~2月)より約1カ月早い発症となりました。12月中旬時点でシヴァモッガ県に6例,チッカマガルール県に1例が確認されています。5例はホサナガラ・タルク内の同一村落に集中し,アレカナッツ農園および周辺森林地帯での曝露が関連していました。ダニに関するデータによると,幼虫期の早期吸血により若虫期が例年より2~3週間早い11月中旬に出現しており,これが流行の前倒しに寄与した可能性が示唆されています。

インドにおける過去の発生傾向では,カルナータカ州を中心に西ガーツ山脈の森林地帯からケララ州,ゴア州,マハーラーシュトラ州,タミル・ナードゥ州へ散発的に拡大しています。季節性は顕著で,症例増加の前兆となる幼若ダニの活動は12〜5月にピークを迎えます。また,サルの死亡報告がしばしば確認され,流行の指標とされています。

調査チームは既知の流行地域で発熱スクリーニングを実施し,感染例を早期に検出,患者は指定病院で治療を受けています。インドでは新規ワクチンの開発が進んでおり,2026年初頭の導入が見込まれています。

公衆衛生対応として,カルナータカ州保健省は影響地域での監視を強化し,発熱症例のモニタリングやマダニ・サルの活動報告を行うチームを配置しました。また,森林関連職業従事者に対しては,ダニ忌避剤の使用,防護服着用,サル死亡報告地域への立入禁止を要請しています。

【文献】

1) 米国CDC:About Kyasanur Forest Disease. (2025年12月21日アクセス)

2) Vartha Bharati:Five cases of KFD infection reported in Shivamogga district; one in Chikkamagaluru. (2025年12月21日アクセス)

石金正裕 (国立国際医療研究センター病院国際感染症センター/ AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

2007年佐賀大学医学部卒。感染症内科専門医・指導医・評議員。沖縄県立北部病院,聖路加国際病院,国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)などを経て,2016年より現職。医師・医学博士。著書に「まだ変えられる! くすりがきかない未来:知っておきたい薬剤耐性(AMR)のはなし」(南山堂)など。


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