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FOCUS:プライマリ・ケアにおける希少疾患・難病への対応~制度と連携の理解を深める 提供:CSLベーリング株式会社

登録日: 2026.01.23 最終更新日: 2026.03.05

加藤真道 (株式会社メディヴァ) 小松大介 (株式会社メディヴァ)

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株式会社メディヴァ
加藤真道
慶應義塾大学経済学部卒業。内資系製薬企業にて医薬情報担当者(MR)として循環器領域,糖尿病領域,消化器領域,感染症領域,呼吸器領域,麻薬領域,がん領域,中枢神経系領域など幅広い領域を担当。その後,MRのアウトソーシング業界にて複数のプロジェクトに従事し,ダイレクトに医療機関を取り巻く環境に関わりたいという想いから2018年に株式会社メディヴァに参画。近年は,公的機関,民間企業を問わず,オンライン診療・服薬指導の構築支援を中心に,また,そのほかにも医療機関の運営・経営支援,在宅療養推進事業に関わるプロジェクトに従事している。
株式会社メディヴァ
小松大介
東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベースマーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後,株式会社メディヴァを創業。取締役に就任。コンサルティング事業部長を兼任。200カ所以上のクリニック新規開業・経営支援,400カ所以上の病院コンサルティング,50カ所以上の介護施設のコンサルティング経験を活かし,コンサルティング部門のリーダーを務める。近年は,病院の経営再生をテーマに,医療機関(大規模病院から中小規模病院,急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。主な著書に,『診療所経営の教科書』『病院経営の教科書』『医業承継の教科書』(日本医事新報社),『医業経営を“最適化”させる38メソッド』(医学通信社)ほか。
私が伝えたいこと
難病は「遠い存在ではない」という認識を持つ:日常の診療の中で,難病の存在を示す「些細な手がかり」を見逃さないことが,患者さんの安全を守る第一歩だと確信しています。
3つの医療費制度の構造を理解する:「高額療養費」「難病医療費助成」「小児慢性特定疾病医療費助成」の適用範囲を正確に把握することが,患者さんを支える土台になると考えています。
患者さんの負担を減らす「チャンス」を発見する:軽症高額認定や付加給付制度の利用機会,受給者証の更新時期のセカンドチェックなど,患者さんが見落としがちな経済的サポートを,先生方に見つけて頂きたいと考えています。
レセプトの査定リスクを回避する実務を徹底する:公費対象となる診療と保険診療を峻別し,診療録に難病との関連性を明確に記載する重要性の高い実務を,ぜひ実践して頂きたいです。
制度・生活の不安を地域連携でサポートする:制度の詳細な手続きや福祉的な相談を,難病相談支援センターへ確実につなぐ「ハブ」としての役割を,先生方に担って頂きたいと願っています。

❶ はじめに:なぜ今,難病を知る必要があるのか?

(1) 希少疾患・難病は「遠い」存在ではない

プライマリ・ケア医の先生方にとって,「希少疾患」や「難病」という言葉は,かつて専門性が高く,大学病院でのみ対応すべきものというイメージがあったかもしれません。しかし,現在の医療環境や患者さんの生活実態をふまえると,その認識は大きく変化してきています。希少疾患・難病患者さんは,専門医が行う治療を受けつつも,日々の健康管理や軽微な体調不良への対応,高血圧症・糖尿病といった併存疾患の治療のために,身近なクリニックを受診する必要があります。つまり,希少疾患・難病患者さんを診る機会は,既にすべての開業医に存在する,きわめて身近な問題となりつつあります。

外来で患者さん自身が,「自分は希少疾患・難病です」と詳しく申告されることは多くはないかもしれません。専門医からの紹介状(診療情報提供書)や受付で提示される特定医療費(指定難病)受給者証は,難病の診断名や認定の有無を知る上で最も重要な情報源です。しかし,患者さんの急な体調不良でこれらの書類がそろわない場合には,問診票のわずかな記載,診療中の所見,お薬手帳に記載された特殊な薬剤など,一見些細に見える情報の中に,希少疾患・難病の背景が潜んでいることも少なくありません。

希少疾患・難病患者さんの診療において,プライマリ・ケア医が負うべき最も重要な責任は,必ずしも診断や専門的治療を担うことではないと考えています。むしろ,患者さんの希少疾患・難病という背景に「気づき」,その情報を診療に活かすことこそが重要です。たとえば,「単なる風邪の治療」という表面的な診療行為にとどまらず,「希少疾患・難病という患者さんの全人的な背景」を意識し,処方する医薬品における希少疾患・難病治療薬との相互作用のリスクに注意する,患者さんが利用可能な医療費助成制度を見落とさない,といった配慮が求められます。この姿勢は患者さんの安全と安心に直結し,これからのプライマリ・ケア医に期待される重要な役割と言えます。

(2) 医療制度の変遷と患者さんの社会生活の変化

日本の難病医療制度は,1972年の「難病対策要綱」策定以降,継続的に発展してきました。特に,2015年に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下,難病法)が施行され,公費負担医療制度として体系化されて以来,医療費助成の対象となる指定難病は段階的に拡大しています。診断基準や重症度分類を全国一律で定めることで,公平な医療アクセスを保障することが制度の基盤となっています。

また,医療の進歩により,希少疾患・難病患者さんは,病気と共存しながら社会生活を送ることが可能となり,その数も増加しています。その背景には,主に以下の3つの要因があり,それぞれが複雑に作用し合っています。

(1)治療法の進歩と生活の質(QOL)の向上

近年,分子標的薬,生物学的製剤,一部疾患に対する遺伝子治療薬などが開発され,以前は進行性とされていた病態でも,症状を効果的にコントロールしながら長期的な共存が可能となりました。こうした病状の安定化は,重度の身体機能の低下を防ぎ,日常生活における自立度の維持や活動範囲の拡大をもたらすことで,患者さんのQOLの向上に直結しています。特に,高額な治療の多くが難病医療費助成制度の対象となったことで,経済的理由により治療を断念するケースが減少しています。これにより,患者さんの社会参加が促進され,日常生活の延長線上でプライマリ・ケア医との関わりが必然的に増加していると考えられます。難病を抱えながら仕事や学業を続ける患者さんが増え,生活全般に関するサポートニーズも高まっています。

(2)診断技術の向上と早期介入

遺伝子解析技術や高精度な画像診断技術,特異的バイオマーカーの発見などにより,以前は困難だった希少疾患の診断が早期かつ正確に行えるようになりました。診断の早期化は,病状進行を抑える早期介入を可能にし,予後の改善に寄与しています。また,正確な診断に早期に到達することで,公的支援へのアクセスも速まり,患者さんの経済的・精神的安定につながります。これは,診断が確定するまで長期間受診し続ける状況を減らすことにもつながり,結果として専門医療とプライマリ・ケアの連携がスムーズになります。

(3)患者登録制度の拡充と行政による可視化

難病法に基づき医療費助成の対象疾患が段階的に拡大され,多くの患者さんが制度を利用できるようになりました。国や地方自治体が制度を通じて患者さんの情報を把握し,統計的・政策的に活用できるようになっています。2015年1月の難病法施行時点では指定難病数は110疾病でしたが,その後段階的に追加が行われ,2025年4月時点では348疾病へと拡大しています。これに伴い,難病法施行前における特定疾患医療受給者証などの交付者数と比較して,特定医療費(指定難病)受給者証の交付者数は大幅に増加し,長期的な療養を必要とする患者さんが確実に増えていることが示されています。

このような社会的変化の結果,希少疾患・難病患者さんは,これまで以上に社会生活を送りやすくなりました。一方で,患者さんには複数の医療機関への通院や,複雑な医療費制度の管理といった新たな負担も生まれています。クリニックにおけるプライマリ・ケアや総合診療の役割は,単に病気を診るだけではなく,患者さんの生活全体をサポートする役割へと拡大しています。制度の複雑さに困惑する患者さんの声を受け止め,適切なサポートへとつなげる「最初の窓口」としての役割が,プライマリ・ケア医の先生方に求められはじめています。

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