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【識者の眼】「オープンサイエンスを巡って⑩─2020年までの5年間に学術出版をすべてOA化する!?」船守美穂

登録日: 2026.01.20 最終更新日: 2026.03.10

船守美穂 (国立情報学研究所情報社会相関研究系准教授、鹿児島大学附属図書館オープンサイエンス研究開発部門特任教授〔クロアポ〕)

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前稿(No.5307)では、値上がりし続ける学術雑誌の購読料への対策として、論文のOA化が学術機関の側から考案されたものの、一枚上手な商業出版社が、これを利益拡大に巧みに利用してしまったことを紹介した。出版社は、非OAの学術雑誌に掲載されている論文についても、論文掲載料(APC)を負担した研究者の論文をOAとする便宜を図ることで、購読料に加えてAPCも収益化することに成功してしまったのである。

これに対して、学術機関は益々いきり立った。急先鋒に立ったのは、ドイツのマックス・プランク研究所において学術出版契約を担う、マックス・プランク・デジタルライブラリー(MPDL)である。学術論文がすべてOAとなれば、世界が購読料として年間負担している76億ユーロは半減し、APCベースの40億ユーロへと縮小するはずである。それにもかかわらず、現実には逆に負担総額が増えてしまっているのである。

この点について、MPDLは2つの問題を指摘した。1つは、学術雑誌が中途半端にOA化されているため、購読料とAPCの双方が支出される事態となっていることである。もう1つは、購読料は機関が負担する一方で、APCは研究者個人が負担するため、機関として学術出版に関する総負担額をコントロールできなくなっていることである。

このためMPDLは、2020年までに世界の学術出版をすべてOA化するという目標「OA2020」を2016年に掲げた。その実現方法として、研究者が負担してきたAPCについても機関が負担することとし、学術出版に関する総負担額を機関のコントロール下に置いた。その上で、購読料とAPCを合わせた契約額は、移行期間中は一定と定め、その内訳を購読料からAPCへと徐々に移行させることで、学術出版全体をOAへとシフトさせようとした。また、他の学術機関にも同様の方式でOA化を進めるよう呼びかけた。

OA2020に賛同した機関は、日本を含め、2017年時点で26カ国、1000機関以上に達した。しかし、その多くは賛意を表明するにとどまり、行動を伴わなかった。あるいは、MPDLと同様の契約方式を交渉しようとしたものの、結果として出版社に支払う契約額が拡大するに終わった例も少なくない。

こうした中、ドイツはMPDLと同様の契約方式を全国規模で展開するため、大手学術出版社3社と交渉する「Projekt DEAL」を開始した。この方針を貫いた結果、エルゼビア社が出版する学術雑誌へのアクセスは、2018〜23年の5年にわたり阻まれることとなった。しかし、2023年にはエルゼビア社との転換契約が成立し、ドイツの研究者は機関負担のもと、論文をOA化できるようになった。ちなみに、米国の多くの研究機関は、様子見の姿勢を取っていたが、カリフォルニア大学だけは行動を起こし、エルゼビア社との2年間の契約決裂期間を経て、2021年からMPDLと同様の契約方式を勝ち取っている。

このように、学術機関と出版社の攻防は一進一退を繰り返している。しかし、こうした状況を見かねて、欧州の研究助成機関が介入を始めている。次稿では、その動きを紹介したい。

船守美穂(国立情報学研究所情報社会相関研究系准教授、鹿児島大学附属図書館オープンサイエンス研究開発部門特任教授〔クロアポ〕)[論文のOA化][OA2020転換契約

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