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■NEWS 日本医師会・全国知事会が意見交換、急激な物価・人件費高騰への対応で認識共有

登録日: 2025.12.12 最終更新日: 2025.12.12

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日本医師会は12月10日、全国知事会と地域医療提供体制の維持・確保に向けた意見交換会をオンラインで開催した。医療現場が直面する物価・人件費・光熱費の高騰は、病院や診療所の経営を直撃している現状認識を両社で共有。その上で日医は2026年度診療報酬改定について、「地域医療の崩壊を防ぐためには、2026年の診療報酬改定で次の2年間を見据えた十分な水準の引上げが不可欠」と改めて主張した。

■物価高対策の補正予算は「一時的な止血」

日医の松本吉郎会長は、病院の6〜7割、診療所の4〜5割が赤字という厳しい医療機関の経営実態に言及し、「地域医療を担う医療機関が倒れれば、地域社会の根幹が揺らぐ」と強い危機感を示した。

また、2025年度補正予算に盛り込まれた1.4兆円規模の財源確保について「物価高・賃金上昇の不足分に対する緊急対応にすぎない」と述べ、抜本的な財源措置は2026年度の次期診療報酬改定で行うべきだと強調した。

角田徹副会長は、医療機関を取り巻く環境変化への対応を「社会保障政策の最優先課題」と位置づけ、診療報酬の確実な改善を要請。加えて、①医師偏在対策(重点医師偏在区域への対応、ドクターバンクの活用支援)、②看護職を含む医療人材確保(自主財源・基金を用いた各都道府県の支援強化)、③医療機関の早期離職対策(ハローワークやナースセンターとの連携強化)、④地域医療構想の推進(都道府県医師会と行政が連携して病床適正化等に取り組む必要性)─の4点を知事会に求めた。

このほか福田稠副会長は、周産期医療体制の脆弱化が地域の出生環境に直結すると懸念を示し、「出産費用の無償化議論の進展にあたり、医療機関の経営基盤に十分配慮した給付体系の再設計が不可欠」と訴えた。

■知事会も日医の危機感を共有

知事会側も、医療提供体制がすでに危機的状況にあるとの認識を示し、日医の主張と歩調を合わせた。

阿部守一会長(長野県知事)は、地方における医療・介護・福祉サービスの経営が軒並み厳しい現状を説明し、「医療機関の苦労を行政が正しく理解し、財政的支援を早期に執行することが重要」との考えを示した。

平井伸治鳥取県知事は「病院経営の改善なくして地域医療は維持できない」とし、診療報酬改定で十分な手当を行う必要性を強調。「診療報酬が追いつかなければ人材流出が起こる」と危機感を示した。診療所の4~5割が赤字という分析にも触れ、「適正な診療報酬こそが地域医療の生命線」と述べた。

■危機感の共有と「共闘」へ

会議では、人口減少に伴う医療機関の休止・廃止の増加や、地域医療構想の進展、医師偏在など構造的課題にも議論が及んだ。知事会側からは「医師会と向いている方向は同じ」「現場の実態を踏まえ、ともに“医療を守る”ための共闘が必要」との意見が相次いだ。

最後に松本会長は、「地域医療体制は地域インフラであり、壊れてはならない。日医と知事会は同じ方向を見ており、本日の議論を国や関係省庁にしっかり伝えていく」と連携強化に向けた決意で締めくくった。

知事会と意見交換をする日医の松本会長


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