ニプロは11月28日に会見を開き、2025年6月に代表取締役に就任した山崎剛司氏(写真)が新体制で掲げる経営方針と重点領域、今後の展望について、就任後初めて公の場で発表した。
山崎社長は医療を取り巻く社会の課題とニーズについて①国・地域ごとの医療ニーズ増大と多様化、②革新的治療技術の向上による新たな治療選択肢、③医療供給の不安定化─の3点を挙げ、これらの課題を解決する術として、これまでの主力事業であった透析関連領域に加え、血管内治療領域、再生医療、医薬品の4分野を新たな主力事業として位置づけ「和心をもった真のグローバル総合医療メーカー」を目指していく考えを示した。
■革新的治療技術への対応 ステントレス治療やnOCTイメージングを紹介
血管内治療領域については低侵襲技術の向上と普及を目的に、ステントレス治療「DCB(Drug-Coated Balloon)」と現在開発中のnOCTイメージングプローブについて説明。冠動脈のカテーテル治療として10年前より徐々に導入されたステントレス治療は、従来の手法とは異なり血管内にステントを残さず薬剤塗布バルーンで再狭窄を防ぐ治療法。nOCTイメージングは、従来の技術の10倍以上の解像度をもつ直径0.4mmのブローブを用いて血管内から詳細に撮影し、脳血管の内の病変部を捉える。山崎社長は「高度な技術力を以て治療の質向上と患者負担軽減に貢献できる」とアピールした。
■「夢の世界だったが現実に近づいてきた」脊髄損傷の新しい治療方法
再生医療については、患者の骨髄液に含まれる間葉系幹細胞を2〜3週間かけ約1億個まで培養した製剤を患者の体内に戻すステラミック法による治療を紹介。同製剤は2018年に条件付き承認後、今年11月14日に最終承認申請を行った。他疾患への応用可能性を検討している段階で、山崎社長は「夢の世界だったが現実に近づいてきた」と期待感を示した。
■医薬品供給安定と医療DX推進で医療課題に対応
医薬品事業では、滋賀県に新工場を設立するなど、抗菌薬やワクチンの安定供給への取り組みを紹介した。
医療DX事業については将来的に同社の新たな成長の柱となる可能性を強調。患者のバイタルサインを自動でシステムに送信し、各端末にリアルタイム配信する院内用データ通信システム「HN LINE」のほか、遠隔診療システム「ハートライン」、透析情報管理システム「DiaCom」「NephroFlow」など、ニプロ総合医療ネットワークを整備。医療の安全・質向上や現場の働き方改革を推進することで社会課題の解決に取り組む姿勢を示した。
