厚生労働省は12月8日の高額療養費制度の在り方に関する専門委員会に、これまでの議論を踏まえた制度見直しの「基本的な考え方(案)」を示した。焦点の一つである外来特例については月額・年間上限の引上げに加え、対象年齢の引き上げの検討を提言。長期療養者への配慮では多数回該当の限度額を現行水準のまま据え置くことや患者負担への年間上限設定を提案した。
基本的な考え方案は、高齢化の進展や医療の高度化により医療費が増大する中にあってもセーフティーネット機能としての高額療養費制度を堅持していくためには、近年の高額療養費の伸び等に一定程度対応した自己負担限度額(以下、限度額)の引上げが必要と指摘。年齢にかかわらない応能負担に基づく制度への転換を提言した。
■所得区分を細分化し、応能負担とのバランスを考えた上限額設定を
その具現化に向けた対応では、現行の所得区分は「あまりにも大括りな制度」と問題視し、住民税非課税区分を除く各所得区分の細分化を提案。細分化後の各所得区分の限度額については、相対的に限度額が大きく増加する上位の所得層においても現在の限度額から著しく増加することのないよう、「応能負担の考え方とのバランスを踏まえた適切な金額設定とすべき」と一定の配慮を求めた。
70歳以上の高齢者のみに設けられている外来特例は「制度の必要性自体は理解できる」としながらも、「現役世代の保険料負担軽減という観点からも、制度の見直し自体は避けられない」と指摘。月額上限および年額上限の引上げに加え、2002年の制度創設当初と比べると健康寿命が延伸し、受診率が低下していることを踏まえ、「対象年齢の引上げも視野に入れて検討すべき」と提言した。
■多数回該当の限度額は現行水準で据え置き、患者負担の年間上限設定を提言
がんや難病などで長期の療養を要する患者への配慮から、多数回該当の限度額を現行水準のまま維持することも提案した。月単位の限度額引上げによって限度額に到達しなくなり、多数回該当から外れてしまう長期療養者の経済的負担軽減のため、新たに患者負担に年間上限を設けることも提言。その対象者については、「例えば、年に1回以上、現在の限度額に該当した方とすることなどが考えられる」とした。
改正後の制度施行時期については、保険者・自治体のシステム改修や国民・医療関係者への周知などの準備期間を考慮し、26年夏以降の順次施行を提案した。次回専門委での最終とりまとめを目指す。