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共同親権時代に医療機関が注意すべき点とは?[〈知っておきたい〉医療機関の法的リスクヘッジ(31)]

登録日: 2025.12.09 最終更新日: 2025.12.12

川﨑 翔 (よつば総合法律事務所東京事務所所長/弁護士)

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key word:改正民法,共同親権,大津地裁判決

2024(令和6)年の民法改正により,離婚後も父母双方を親権者とする「共同親権」が原則になりました。この改正民法は,公布日から2年以内,すなわち遅くとも令和8年5月までに施行される予定です。改正後は,離婚後であっても父母双方が親権者となる事案が増えることが見込まれ,未成年者の医療における「誰から」「どこまで」同意を取るのかという問題が,婚姻中のみならず離婚後の場面でもいっそうクローズアップされることが予想されます。

今回はこれまでの裁判例を参考に,医療機関として注意すべき点を整理していきたいと思います。

1.法改正のポイントと医療同意の基本的枠組み

改正民法は,父母双方が親権者であるときは原則「共同して」親権を行使することとしつつ,①子の利益のため急迫の事情があるとき(DV・虐待からの避難,緊急の場合の医療等),②監護及び教育に関する日常の行為については,一方が単独で行使できることを明文で示しました。現行民法では親権の行使方法についての明文規定がなく,解釈にゆだねられていましたが,今回の改正でより明確化されたかたちです。

【改正後民法第824条の2(親権の行使方法等)抜粋】
1 親権は,父母が共同して行う。ただし,次に掲げるときは,その一方が行う。
 ①その一方のみが親権者であるとき。
 ②他の一方が親権を行うことができないとき。
 ③子の利益のため急迫の事情があるとき。
2 父母は,その双方が親権者であるときであっても,前項本文の規定にかかわらず,監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。
(以下省略)

他方,子の進学・転居・手術等,子の生活や将来に重大な影響を与える事項は,共同親権のもとでは「父母が協議して決めるべき重要事項」と整理されており,医療行為のうち侵襲性が高いものは,原則として両親権者の共同同意が必要になります。日本医師会でも,未成年者への診療行為については,本人に判断能力がない場合は親権者への説明と同意取得を前提とし,本人に判断能力がある場合でも親権者への説明と了解を得ておくことが望ましいとしています。

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