厚生労働省は、被用者保険における健康保険証の有効期限切れに関し、2026年3月末まで従来の保険証での受診を可能とする暫定措置を適用する方針を明らかにした。12月1日に約7700万人分の被用者保険証が一斉に期限切れとなることを踏まえ、医療機関・薬局に対しオンライン資格確認により負担割合を判定する運用を示したもの。ただし、国民向けの周知広報は行わないとの立場を取っている。
11月18日の記者会見で上野賢一郎厚労相は「有効期限切れに気づかず従来の保険証を持参するケースが当面想定される」と述べ、現場の混乱抑制を目的として暫定的な取り扱いを示したと説明。一般向け広報の実施について問われると、「マイナ保険証または資格確認書で受診していただきたい」と述べるにとどめ、積極的な周知を行う方針がないことを明らかにした。
また健康保険組合から「被保険者に対する案内を行うべきか」との照会が寄せられた際、厚労省が「照会があれば回答する」との対応を行っていたことも上野厚労相は認めた。有効期限切れ保険証の扱いを示したにもかかわらず、マイナ保険証での受診促進のため周知を限定していることで混乱が生じる可能性があり、現場からは懸念の声が上がっている。
厚労省は11月12日付の事務連絡において、国民健康保険や後期高齢者医療制度の被保険者が有効期限切れの保険証を提示した場合でも、オンライン資格確認により一定の負担割合で受診できる暫定措置を通知。今回の被用者保険に対する取り扱いは、この枠組みを拡大した形となる。今後、マイナ保険証への一本化に向けた運用に向けた情報提供のあり方が改めて問われることになりそうだ。