本連載では,医師限定オンラインサロン「ドクターズチャート」の代表であるMM先生,よいこはこいよ先生に,ドクターズチャート内での話題をもとに,イマドキの開業・開業医について語って頂きます。
MM:ドクターズチャート代表。開業10年以上の医療法人理事長。Ph.D.。 Xフォロワー2万人。
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よいこはこいよ:ドクターズチャート代表。医学博士,内科医,クリニック院⻑。Xフォロワー1万人。
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──今までも何回か,クリニックスタッフに関する話題は出ましたが,今回は,採用後のスタッフの定着について,語って頂きます。
クリニックスタッフの定着率,実際どれくらい?
MM クリニックって,スタッフの回転が早いってよく言われますよね。一般的には,オープニングスタッフは2〜3年経ったら全員入れ替わっている,なんて話もよく聞きます。みんな「そんなもんかな」と思っている節もあると思うんですが,中には全員が一気に辞めてしまって大変なことになったというケースもあります。うちは今,開業から15年くらいになりますけど,オープニングスタッフがまだ半分以上残ってくれているんですよ。よいこ先生のところもそういう感じでしたよね。
よいこはこいよ(以下,よいこ) うちも開業から15年以上経ちますが,半分とまではいかなくても,ずっと勤めてくれている人が何人かいます。
MM それが良いのか悪いのか,というところですよね。人件費は上がりますけど,トータルで考えればやはり長く続けてもらうほうが良いと思います。「人件費が上がるくらいなら,どんどん入れ替えて安い給料で」という考えの先生もいますが,採用にもコストがかかりますからね。お金の面もそうですが,採用活動そのものが大変です。
よいこ 昔は,受付が保険証を預かって会計して処方箋を渡す,という比較的シンプルな仕事でしたけど,今は電子化も進んで覚えることが増えました。保険制度も福祉制度も複雑になってきていますし,1〜2年で辞めて新しい人が入っても,すぐに即戦力として動けるかというと難しいですよね。そう考えると,やはりスタッフが定着してくれるのはクリニックにとってプラスになります。家庭の事情などは仕方ないにしても,それ以外の理由での離職は減らしたいところです。逆に,スタッフが長くいることのデメリットもあります。ひとつは,情報を抱え込んで“お局化”する人が出てくること。もうひとつは,入れ替わりがないことで世代が固まってしまって,新しい人が入りづらい雰囲気になることですね。
MM それはよく聞きますね。定着率の高いクリニックほど,新人がなかなか定着しないという話。うちもそういう時期がありました。新しく入ってきた人がどうしても馴染めないんですよね。そこをほぐすのは,やはり院長の役割かなと思います。
よいこ 定着と,ある程度の“風通し”ってどちらも大事ですよね。ちょっと話がそれますが,リクルートという会社では離職率を8%くらいに設定しているそうです。離職率が高すぎると会社は成り立たないけれど,ある程度の入れ替わりがあったほうが技術や知識が継承されていく。それと同じで,クリニックも離職率が低すぎても良くない面がある。新しい人が入らなくなると,職場の流動性がなくなりますよね。
MM うちも2年くらい新人を入れなかった時期があって,そのときは院長としてはすごくやりやすかったんですよ。全員がわかっているスタッフばかりなので。でも,だんだんマンネリ化して,スタッフも惰性で仕事をするようになってしまう。やはりクリニックに活気がなくなる感じがありました。逆に新人が入ってくると,先輩たちもピリッとして,気持ちを入れ替えるんですよね。だから新人をきちんと定着させるように,院長が気を配ることはすごく大事だと思います。
よいこ そうですね。スタッフに新しいことをやってほしいとか,成長してほしいと思っても,なかなか難しい。でも新しい人が入ってくるときって,それを実現できる数少ないチャンスなんですよね。人に教えることで,教える側も「なぜそうしていたのか」を改めて考える。それで既存のスタッフが急にしっかりしてくる瞬間がある。そういう意味でも,流動性はある程度必要だと思います。