検索

×
絞り込み:
124
カテゴリー
診療科
コーナー
解説文、目次
著者名
シリーズ

レプトスピラ症[私の治療]

登録日: 2025.11.20 最終更新日: 2025.11.20

栗田崇史 (東京科学大学大学院医歯学総合研究科統合臨床感染症学分野)

お気に入りに登録する

レプトスピラ症は,レプトスピラ属の病原性スピロヘータ感染によって起こる人獣共通感染症である。黄疸や腎不全を伴う重症型はワイル病として知られている。レプトスピラの無症候性キャリア動物であるげっ歯類(主にネズミ)は尿中に病原体を排泄し,環境,特に水を汚染する。レプトスピラは土壌や淡水中で数日~数カ月生存するため,汚染された環境への曝露により経皮的・経粘膜的にヒトへの感染が成立する。
世界的には南アジア,東南アジア,オセアニア,カリブ海地域,アンデス,中央アメリカ,ラテンアメリカ,サハラ以南の東アフリカ等,熱帯および亜熱帯地域で流行している。国内での発生事例は輸入例よりも国内感染例が圧倒的に多い(94%)。国内感染例の大半が沖縄県(63%)での感染で,ついで鹿児島県(6%)の報告が多い1)。発症時期は7~10月に集中している。沖縄県での感染例は河川のレジャー・労働など水系曝露によるものがほとんどだが,他の都道府県での感染例は台風などの水害,ネズミ咬傷,ネズミの尿で汚染された市場など,様々な感染経路が報告されている。なお輸入例は大半が東南アジアでの感染例である。

▶診断のポイント

潜伏期間が5~14日であることをふまえて,流行地への訪問や,淡水・げっ歯類への曝露の病歴を確認することが重要である。曝露因子に加えて,筋痛を伴う発熱,黄疸,急性腎障害,肺出血,無菌性髄膜炎といった臨床症状をきっかけに疑う。確定診断のための検査は,ペア血清での抗体検出(91.4%)が最も陽性率が高く,ついで血清・尿・髄液検体PCRによる検出(52.9%)である1)。ただし,いずれもわが国では保険収載されていない。


1 2