検索

×
絞り込み:
124
カテゴリー
診療科
コーナー
解説文、目次
著者名
シリーズ

アカシジア[私の治療]

登録日: 2025.11.23 最終更新日: 2025.11.23

前田哲也 (岩手医科大学医学部内科学講座脳神経内科・老年科分野教授)

お気に入りに登録する

アカシジア(akathisia)は,主に抗精神病薬の使用に関連する運動障害である。『神経学用語集 改訂第3版』1)には,「akathisia静坐不能症(アカシジア)(=acathisia)。語義は坐位でじっとしていられないことだが,実際は立位や臥位でも見られる」と記載され,脳炎後パーキンソニズムやパーキンソン病でも報告がある。『DSM-5-TRTM精神疾患の診断・統計マニュアル』2)の「医薬品誘発性運動症群及び他の医薬品有害作用」の項には,急性アカシジアと遅発性アカシジアにわけて記載があり,臨床症状に加え原因薬剤の特定により診断される。治療は被疑薬の中止であるが,困難な場合には他剤への変更を検討する。対症的な薬物療法はエビデンス不十分で保険適用もない。

▶診断のポイント

被疑薬とその原疾患の病歴が重要である。抗精神病薬に加え,ドンペリドン,メトクロプラミド,スルピリドなどの服用歴にも注意する。絶えず動いていたいという衝動を背景に,じっと座っていられない,じっと立っていられない,臥床中に体動を繰り返す,など,体位によらない四肢体幹の静止状態の維持困難を示唆する訴えが重要である。重度になると不安焦燥感が顕著となり,耐えられなくなると自傷行為の企図にも及ぶとされる。

神経学的診察は重要であり,錐体外路徴候に注意する。顔面,四肢および体幹を,静止時,姿勢時,運動時のそれぞれで観察し,体位も坐位,立位,臥位の異常運動に加えて入室時から診察中の歩容も観察する。アカシジアの重症度評価にはBarnes akathisia scaleやdrug-induced extrapyramidal symptoms scaleが用いられる。

鑑別診断では,原疾患に伴う気分障害の悪化や原疾患自体の悪化による異常行動の亢進,レストレスレッグス症候群(RLS),遅発性ジスキネジアなどを考慮する。常同性運動障害や反応性に表出する行動異常などとの鑑別は困難な場合がある。RLSは表現型が類似するが,下肢のみの不快感に対する困窮を訴え,安静時に悪化するが動かすことで軽減する。


1 2