自殺企図(未遂)者は,その行為によって生じた身体疾患治療のために医療機関を訪れる。このとき,身体疾患治療の同意を得るとともに,希死念慮などの精神的な評価も並行して行う。再企図に至らないための精神的な支援への「つなぎ」を行う。
▶病歴聴取のポイント
話したがらない,意識障害を呈するなど,本人からの聴取が難しい場合はもちろんだが,そうでなくても,付き添いの家族や救急隊などからの情報も必ず聴取し整合性を確認する。偶発事故を装っている場合もあり,受傷機転から自殺企図を疑うことも必要である。希死念慮の確認は,直接的な方法のほかに「消えてしまいたい」「生きていることがつらい」など表現を変えて聴取する方法もある。遺書や凶器など客観的な証拠も確認する。「つなぎ」先では,婚姻・家族歴,精神科治療歴,企図歴も必要である。
▶バイタルサイン・身体診察のポイント
バイタルサインから蘇生処置を行いつつ,自施設での対応が可能か判断する。バイタルサインが安定していれば,解剖学的な評価に移る。
【リストカット】
活動性出血があれば止血処置を優先する。PMS〔脈拍(pulse),運動(moter),感覚(sensory)〕で血管・神経・腱損傷の有無を確認する。意識障害があっても血流の評価は必ず行う。
【オーバードーズ】
意識障害をきたさなくても致死的となる薬物があることに注意する。アセトアミノフェンは成人で7.5g以上の服用で肝不全のリスクがあり,拮抗薬であるN-アセチルシステインの投与が考慮される。カフェインは成人で6g以上の服用で頻脈性の不整脈から致死的となる。
