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百日咳[私の治療]

登録日: 2025.11.17 最終更新日: 2025.11.17

山岸由佳 (高知大学医学部臨床感染症学講座教授)

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百日咳は百日咳菌(Bordetella pertussis)が気道粘膜で増殖し産生する毒素(pertussis toxin:PT,filamentous hemagglutinin:FHAなど)によって起こる感染症である。一部はパラ百日咳菌(B. parapertussis)も原因となる。感染経路は飛沫および接触感染で,潜伏期間は5~21日間とされる。以前は感染症法5類小児科定点把握疾患となっていたが,国内の疫学調査で成人例の報告の増加により,2018年1月1日以降は感染症法5類全数把握疾患となっている1)。届出は下記の症状を呈し何らかの検査法(分離同定,核酸増幅法,イムノクロマト法,抗体検出)で百日咳診断された者(死体を含む)を7日以内に届け出ることとなっている1)。学校や地域での集団発生も報告されている2)
乳児期早期でワクチン未接種例が,最も典型的な症状を呈する。病期は,カタル期,痙咳期,回復期の3つにわけられる。カタル期は,上気道症状(咳嗽,鼻汁など)から発症し,1~2週間の間にしだいに咳嗽が悪化する。その後,連続性の咳嗽〔staccato(スタッカート)〕が発作的にみられる。吸気時に笛声〔whoop(ウープ)〕を伴う特徴があり,staccatoとwhoopを繰り返す発作をレプリーゼ(痙咳期の咳発作)と言う。全体で3週間程度増悪し,その後8週間程度持続して,しだいに改善傾向を示す。これを回復期と呼ぶが,この期間も比較的長く経過し最長6週間ほど持続する。咳嗽に伴う嘔吐やチアノーゼを呈する場合もある。発熱はあっても微熱程度のことが多い。合併症に無呼吸や肺炎,痙攣,脳症などがある。肺高血圧症や臓器不全に至る重症例もある。乳児期以降の百日咳も主症状は咳嗽であるが,軽症例が多い。咳嗽の期間は症例にもよるが遷延し,慢性咳嗽の原因のひとつでもある。


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