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【識者の眼】「日本初の女性総理大臣誕生に寄せて」稲葉可奈子

登録日: 2025.11.10 最終更新日: 2025.11.19

稲葉可奈子 (産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)

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日本で初めて、女性の総理大臣が誕生しました。

「媚びを売っている」など、女性への偏見とも受け取れる批判もみられ、ジェンダーバイアスがいまだ日本社会に根強く残っていることが浮き彫りになりました。一方で、初めて女性が総理大臣となったインパクトは非常に大きく、産婦人科医としても大いに期待しています。

高市早苗総理大臣は、第219回臨時国会での所信表明演説において、次のように述べています。

「『攻めの予防医療』を徹底し、健康寿命の延伸を図り、皆が元気に活躍し、社会保障の担い手となっていただけるように取り組みます。特に、性差に由来した健康課題への対応を加速します。私は長年、女性の生涯にわたる健康の課題に取り組んでまいりましたが、昨年、『女性の健康総合センター』が設立されました。本センターを司令塔に、女性特有の疾患について、診療拠点の整備や研究、人材育成等に取り組むなど、その成果を全国に広げてまいります」

高市総理大臣ご自身も、かつて更年期症状に苦しんだご経験があり、この分野への思い入れは強いものと思われます。管理職における女性の割合を高めるといった目標はこれまでも掲げられてきましたが、実質的な改善につながる施策は乏しいのが現状です。経済産業省の試算によると、女性特有の健康課題による社会全体の経済損失は、年間約3.4兆円に上るとされています。

これまでも「女性版骨太の方針」に、女性特有の健康課題についての記載は盛り込まれてきましたが、社会全体に明確な変化が生じている実感はまだありません。やはり、実体験に基づく目標には、強いモチベーションと現実的な推進力があるのではないかと期待します。

治療法が既に確立しており、しかも保険診療で対応できるにもかかわらず、社会で十分に活用されていない。その結果、多くの女性が症状に苦しみ続け、経済損失が生じている。この矛盾を解消するために、行政・民間・医療が一体となって具体的な方策を進めていく必要があります。

さらに、医療機関の電子化やデータヘルスの推進にも言及がありました。適切に設計されれば、現状では市区町村の管轄となっているがん検診や定期予防接種の情報を一元管理することができるようになり、call recallによる検診率・接種率の向上も期待できるのではないでしょうか。

医療と政治は切っても切り離せません。支持の有無にかかわらず、医療、ひいては国民の健康に真に寄与する変化となるよう、今後の取り組みを注視していきたいと思います。

稲葉可奈子(産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)[産婦人科[女性特有の健康課題]

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