不安症の代表的な疾患のひとつである。突然前触れもなく,動悸,息苦しさ,めまい等の症状が出現する「パニック発作」を繰り返し,そのため「またあの『発作』が起きたらどうしよう」と過度に心配になって,外出などが制限されてしまう。以前は,著明な精神科医S.フロイトによって,別稿の「全般不安症(全般性不安障害)」とともに「不安神経症」と言われていた。フロイトはその原因を「内的葛藤等によって抑圧された感情」としたものの,薬物治療が有効なことがわかり,1980年に米国精神医学会によって独立した精神疾患として命名された。病態としては,扁桃体の病的過活動や前頭前野の機能低下が示唆されている。
▶診断のポイント
【症状】
突然生じる(予期しない)反復性(2回以上)の「パニック発作」を経験したことで,「またあの発作が起きたらどうしよう」と絶えず不安に思い(=予期不安),そのため自己の行動が制限されてしまう(例:発作が生じた場所を避ける)。
「パニック発作」とは,突然の,数分以内にピークに達する,強烈な恐怖または激しい不快の高まりで,診断的には以下の13の症状〔①動悸,心悸亢進,または心拍数の増加,②発汗,③身震いまたは震え,④息切れ感または息苦しさ,⑤窒息感,⑥胸痛または胸部の不快感,⑦嘔気または腹部の不快感,⑧めまい感,ふらつく感じ,頭が軽くなる感じ,または気が遠くなる感じ,⑨寒気または熱感,⑩異常感覚(感覚麻痺またはうずき感),⑪現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している),⑫抑制力を失う,または「どうかなってしまう」ことに対する恐怖,⑬死ぬことに対する恐怖〕のうち4つ以上の症状が必要である。
