検索

×
絞り込み:
124
カテゴリー
診療科
コーナー
解説文、目次
著者名
シリーズ

急性膵炎[私の治療]

登録日: 2025.11.11 最終更新日: 2025.11.11

登 千穂子 (近畿大学医学部外科学教室肝胆膵部門) 松本逸平 (近畿大学医学部外科学教室肝胆膵部門主任教授)

お気に入りに登録する

急性膵炎は,膵酵素が膵組織内で異常に活性化し自己消化を引き起こすことで発生する,膵臓の急性炎症である。炎症は膵周囲の組織にも波及し,全身の臓器障害を引き起こすことがある。発症から数日の経過で軽快する例から,臓器不全や感染性合併症のために致命的経過をたどる可能性がある重症例まで,多様な臨床像を呈する救急疾患である。胆石とアルコールが二大成因で,その他の成因として脂質異常症や薬剤性,遺伝性,外傷,膵管癒合不全,自己免疫性,膵胆道系腫瘍などがある。また,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)などの内視鏡手技に伴う急性膵炎や慢性膵炎の急性増悪も含まれる。
2016年の全国調査では,急性膵炎の受療患者数は年間10万人当たり61.8人と増加傾向にあり,急性膵炎全体の死亡率は1.8%,重症例では6.1%と報告されている。男女比は2:1で,アルコール性膵炎は男性に多く,胆石性膵炎は女性に多い傾向がある。

▶診断のポイント

急性膵炎の成因について考えを巡らせながら病歴を聴取し検査計画を立てることと,急性膵炎と診断したら直ちに重症度判定を行うことが重要である。『急性膵炎診療ガイドライン2021(第5版)』では診療フローチャートと,特に初期対応を中心とした11項目の診療指針としてPancreatitis Bundles 2021が記載されている。初療の際は,ぜひともガイドラインを参照されたい。

【急性膵炎の診断基準】

①上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある,②血中または尿中の膵酵素(膵アミラーゼ,リパーゼ)の上昇がある,③超音波,CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見(膵腫大や周囲の炎症性変化,浮腫など)がある,の3項目中2項目以上を満たし,他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する。

【急性膵炎の重症度診断】

厚生労働省難治性膵疾患調査研究班が作成した重症度判定基準が汎用されており,予後因子スコアと造影CT Gradeによる重症度判定を行う。特に造影CTによる評価は重要で,診断後3時間以内に造影CTを行い膵造影不良域や病変の広がりなどを検討する必要がある。


1 2