筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は,成人の全年齢に発症する進行性難病(ピークは60〜70歳代)である。筋萎縮の初発部位は上肢,下肢,呼吸筋,咽頭・喉頭筋など様々だが,次第に全身に筋萎縮が波及するという特徴がある。呼吸筋麻痺出現のタイミングは症例ごとに多様であるが,陽圧換気療法が必要になる統計学的中央値は発症から3~4年である。
在宅医の役割は重要であり,多職種チーム(看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,栄養士,介護福祉士,医療ソーシャルワーカー,ボランティア等)を組織して身体症状の進行に誠実に対応する。患者が大切にしている生活分野を聴き取り改善するという肯定的サポート法を取り入れると,症状緩和に成功する。
▶代表的症状・検査所見
筋萎縮に伴う運動機能障害が起こり,書字,歩行,摂食,着替え,家事,排泄などが障害され進行する。前頭側頭型認知症の合併もある。生命に関わる嚥下障害,呼吸不全の進行スピードは数週から年単位まで多様である。声量低下,咳嗽の弱さ,臥位でのSpO2低下は,努力肺活量(%FVC)の著減を示す(SpO2は%FVC>60%では低下しない)。栄養障害で呼吸機能の低下速度は増強する。本来,感覚障害はないが,体動困難から体の痛みが起こりやすい。陽圧換気療法が成功すると数年~十数年の療養生活が可能となるが,長期経過に伴い,陰性徴候の外眼筋麻痺,自律神経障害,褥瘡,認知症が起こることがある。
