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【識者の眼】「新型コロナワクチンをめぐるデマ情報の氾濫に対して我々ができること」児島悠史

登録日: 2025.11.06 最終更新日: 2025.11.12

児島悠史 (薬剤師/Fizz-DI代表)

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メディアではあまり話題にならなくなったものの、新型コロナウイルス感染症の流行は現在も続いており、2023年には3万8000人、2024年にも3万5000人以上が死亡するなど、多くの命を奪う感染症であることに変わりはありません。

こうした感染症の流行下でも、できるだけ日常生活を損なわずに過ごすための重要な対策の1つがワクチン接種です。オミクロン株流行以降も、ワクチンには発症・重症化1)、後遺症2)リスクを抑える効果が確認されているからです。特に若い世代にとっては、長期的なQOL低下の原因となる後遺症リスクへの対策として、非常に重要な選択肢と言えます。

しかし、このワクチンに関しては、インターネットやSNSだけでなく、テレビなどのメディアでも、きわめて偏った情報が拡散されることがあります。特に最近多いのが、「効果のない欠陥ワクチンだ」といった論調です。

確かに、流行初期の従来株に比べると、最近のオミクロン株に対する感染予防効果が“弱まった”のは事実です3)。ただ、“弱まった”のであって、“ゼロ”になったわけではありません1)。ところが、このような情報を「感染予防効果は“最初からなかった”」と歪めて拡散するケースが非常に多く見られます。事実、厚生労働大臣の記者会見では、2025年6月17日以降、ほぼ毎回のように「ワクチンに効果はなかった」と“言わせる意図を感じる質問”を、同じ記者が執拗に繰り返していることが記録されています。こうした手口は、ますます巧妙化してきています。

デマ情報は、恐怖や怒りといった感情を刺激する形で発信されるため、正確な情報よりも拡散されやすい傾向があります4)。日々接する患者さんがこうしたデマ情報に振り回されないよう、日頃から密にコミュニケーションをとっておくこと、また、不安を相談された際には、正確な情報をもとにしっかりと対応することができるよう、準備しておくことが求められています。

【文献】

1) Maeda H, et al:Expert Rev Vaccines. 2024;23(1):213-25.

2) Xie Y, et al:N Engl J Med. 2024;391(6):515-25.

2) Accorsi EK, et al:JAMA. 2022;327(7):639-51.

4) Vosoughi S, et al:Science. 2018;359(6380):1146-51.

児島悠史(薬剤師/Fizz-DI代表)[薬剤師][新型コロナウイルス感染症][情報リテラシー]

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