角層の形成に関わる遺伝子群の変異により,先天的または出生後の比較的早期から「乾燥肌」をきたす疾患群の総称である。最軽症の尋常性魚鱗癬から最重症の道化師様魚鱗癬まで重症度は幅広い。主な病型は,尋常性魚鱗癬,X連鎖性魚鱗癬,表皮融解性魚鱗癬,表在型表皮融解性魚鱗癬,ichthyosis with confetti,ロリクリン角皮症,葉状魚鱗癬,先天性魚鱗癬様紅皮症,道化師様魚鱗癬である。このうち,尋常性魚鱗癬は人口の約10%が罹患する頻度の高い疾患であるが,そのほかの病型は稀である。一部の病型を除いて症状は生涯にわたり持続し,難治性である。
▶診断のポイント
臨床所見と病理所見により診断されるが,遺伝子検査で診断を確定させることも可能である。代表的な原因遺伝子は,本稿執筆時点ではすべて保険適用外であるものの,かずさ遺伝子検査室で検査可能である。
以下に,病型診断のポイントを記載する。出生時に症状がなければ,尋常性魚鱗癬かX連鎖性魚鱗癬である。X連鎖性魚鱗癬は通常,男性が罹患する。尋常性魚鱗癬はX連鎖性魚鱗癬よりも軽症なことが多く,四肢屈側は侵されにくい。また,尋常性魚鱗癬ではアトピー性皮膚炎の合併が多い。びらんや水疱を生じやすいエピソードがあれば,表皮融解性魚鱗癬または表在型表皮融解性魚鱗癬である。これらの魚鱗癬では,病理学的に顆粒変性が認められる。径1cm程度までの白色〜褐色,緑色で表面がツルツルした正常化皮膚領域が多発していれば(数百~数千箇所),ichthyosis with confettiである。ハニカム型の掌蹠角化症を伴い,不整形の紅斑を認める場合は,ロリクリン角皮症の可能性が高い。常染色体潜性遺伝の場合,葉状魚鱗癬か先天性魚鱗癬様紅皮症,道化師様魚鱗癬である。
鱗屑が粗大で固着性,褐色調であれば葉状魚鱗癬,鱗屑が白色で細かければ先天性魚鱗癬様紅皮症,全身に板状の厚い鱗屑を認めれば道化師様魚鱗癬である。これら3つの病型ではいずれも眼瞼外反を呈する。
