最近、ポーカーをはじめました。といっても、多くの方が子どもの頃に親しんだものとは少し異なり、「テキサスホールデム」という競技ポーカーです。プレイヤーごとに配られる2枚の手札と、全プレイヤー共通の最大5枚のカードを組み合わせて、役の強さを競います。確率論と心理戦を駆使して最適解を探るというその奥深さにすっかり魅了されるうちに、専門分野である認知症予防との関連を考えるようになりました。
本連載において以前(No.5279)、帯状疱疹ワクチンと認知症予防効果について執筆しましたが、「ゲームと認知症予防」という観点では、麻雀に科学的エビデンスがあることが知られています1)2)。一方で、ポーカーが認知症予防に有効であるというエビデンスは、残念ながらほとんど見つかりませんでした。
麻雀とポーカーの共通点
麻雀が認知症予防によいとされる理由には、戦略的思考や相手の意図を読む高度な認知能力、指先を使うことによる脳への刺激、さらに他者との会話を通じた社会性の維持などが挙げられます。
これらの要素は、実はポーカーにも共通しています。特にテキサスホールデムでは、確率計算、相手の持ちうるカード(ハンドレンジ)の推測、相手の表情や仕草を読み取る心理戦など、非常に高度な戦略的思考が求められます。脳の活性化という点で、麻雀に劣るとは考えにくいと思われます。
ポーカーの優位性
さらに、高齢者が楽しむアクティビティとして比較した場合、ポーカーのほうが優れている点もあるかもしれません。
麻雀は専用の卓と牌、そして4人のプレイヤーが必要であり、プレイ中の牌の音が大きく響くこともあります。一方、ポーカーはトランプさえあれば2〜10人でどこでもはじめられます。ルールも比較的簡単で、場所や人数に柔軟に対応することができるため、継続しやすく、高齢者が新たな趣味としてはじめるにもハードルが低いと言えるでしょう。
ポーカー、はじめませんか?
新しい趣味の候補としても、ポーカーは非常に魅力的だと感じています。近年、国内のポーカー人口は急増しており、ポーカールームも各地に開設されています。また、YouTubeやスマートフォンのアプリを通じて、トッププロの戦略を手軽に学ぶことができる環境も整っています。
論理と確率を駆使して最適解を導き出すこのゲームの奥深さは、多くの先生方の知的好奇心を刺激するのではないでしょうか。日々の思考にちょっとした刺激を加えるマインドスポーツとして、一度体験してみてはいかがでしょう。
【文献】
1)Tian G, et al:Front Aging Neurosci. 2022;14:966647.
2)Zhang H, et al:Front Neurol. 2020;11:178.
内田直樹(医療法人すずらん会たろうクリニック院長)[認知症予防][ポーカー]