かつて乳幼児期の食物アレルギーに対しては,自然に寛解することを期待し完全除去を指示される場合が多かったが,現在では経口免疫寛容に対するメカニズム解明や臨床研究におけるエビデンスから,過剰な除去は避けるべきという考えが一般的である。十分な緊急時対応の体制確保や生活管理指導表などの社会生活支援を前提に,食物に関するアレルゲンの知識や食物経口負荷試験(oral food challenge:OFC)の結果をもとに適切な指導を行い,最終的には寛解・治癒をめざしていく。
▶診断のポイント
食物アレルギーは,「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義され1),その診断は,特定の食物摂取によりアレルギー症状が誘発され,特異的IgE抗体など免疫学的機序を介することを確認することでなされる。即時型反応の症状として,多くは原因食物を摂取後2時間以内に皮膚症状,粘膜症状,呼吸器症状,消化器症状,頻脈や血圧低下などが出現する。
診断に重要なことは第一に詳細な問診であり,食物摂取と症状誘発の関連(量,質,時間,状況,再現性など)を明らかにする。
血液検査として,血清総IgEとアレルゲン特異的IgE抗体検査がある。皮膚プリックテストも同様にアレルゲン感作を検出する方法だが,花粉-食物アレルギー症候群では,新鮮な果物など食品そのものを使用するprick-to-prick testが有用である。また,アレルゲンコンポーネント特異的IgE抗体検査により診断精度を上げることが期待できる。なお,特異的IgE抗体の存在は,当該食物への「感作」を示すものの真のアレルゲンとは限らないため,スクリーニング目的でこれらの検査を行うべきではない。
食物アレルギーの管理・治療を,安全かつ効果的に実施する上で最も重要なのがOFCである。OFCは,アレルギーが確定しているか疑われる食品を単回または複数回に分割して摂取させ,症状の有無を確認する検査であり,確定診断,安全摂取可能量の決定および耐性獲得の確認を主な目的として実施する。適応は乳児から含まれ(保険適用は16歳未満),症状誘発リスクに十分留意し,基礎疾患や合併するアレルギー疾患の症状がコントロールされている状態で実施する。
