肝性脳症は,肝臓で代謝されなかった毒性物質が中枢神経に作用することによって発症する神経機能障害である。肝性脳症では,意識障害や異常行動などの神経症状が出現するだけでなく,転倒や交通事故のリスクも高いことから,早期発見と治療が重要である。肝性脳症の治療は,神経機能障害を認める場合だけでなく,再発予防のための治療も重要である。
▶診断ポイント
肝硬変患者に指南力の低下,羽ばたき振戦,異常行動などが認められた場合に肝性脳症を疑う。近年,上記の症状を認めない場合でも,非代償性肝硬変患者や低栄養状態にある患者にはストループテストなどの神経機能検査を用いて,不顕性肝性脳症の有無を評価することが推奨されている。肝性脳症は慢性肝疾患患者に認められる場合が多いが,急性肝不全(肝疾患を基礎疾患に有しない)患者でも認められることがある。
