ポリファーマシーは高齢化が進むわが国において頻度の高い問題である。ポリファーマシーに明確な定義はないが,一般的には5種類以上の薬剤を服用している状態とすることが多い。原因は多岐にわたるが,高齢化に伴い多疾患併存(multimorbidity)となった結果,それぞれの疾患や病態に対して多数の薬剤が処方され,ポリファーマシーとなることがある。このように在宅医療現場では,ポリファーマシーになりやすい背景があるため,対策が求められている。
▶アセスメントのポイント
【在宅医療現場におけるポリファーマシーの疫学】
在宅医療現場におけるポリファーマシーについて,2013年に行われた横断研究によると,わが国で在宅医療を受けている患者の平均薬剤数は6.4±3.4剤であり,有病率は60.7%と報告1)されている。また,高齢者が服用すると薬剤有害事象(adverse drug events:ADEs)を含めて危険性が高い薬剤,すなわち潜在的不適切処方(potentially inappropriate medications:PIMs)の割合も40.4%と高かった。さらに,医療保険請求データベースに基づいてポリファーマシーの有病率をみた横断研究2)においても,2015年および2019年における5剤以上のポリファーマシーの割合はどちらも70%程度と非常に高かった。
【在宅医療におけるポリファーマシーの特徴】
在宅医療を受けている患者の大きな特徴は,外来への通院が困難になっていることである。通院が困難になっている背景には,多疾患併存や介護負担の増加があり,相対的に薬剤負担も大きくなっていることが多い。
在宅医療に移行するにあたっては,担当医は訪問診療医に集約されることが多く,複数医師が関わることによって生じるポリファーマシーの課題は解決される可能性がある。さらに施設に入所した人は,生活習慣が改善したり,服薬アドヒアランスが向上したりする可能性がある。そういった意味では,在宅医療導入時は薬剤整理を行うのに適したタイミングである。
