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【識者の眼】「病院経営を考える④:情報の非対称と理解」飯田修平

登録日: 2025.10.27 最終更新日: 2025.10.27

飯田修平 (〔公財〕東京都医療保健協会医療の質向上研究所研究員、練馬総合病院質管理部部長・名誉院長)

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前稿(No.5298)にて、「経営とは、情報技術に基づく情報システムの構築、情報の利活用、質向上、安全確保、信頼性向上、経営への貢献の全段階の実践である」と述べた。

太古から現在に至るまで、「情報を制する者が社会・組織を制する」という事実は変わらない。すなわち、情報こそが最大の力である。

ただし、力とは、ただ持っていればよいというものではない。力はあくまで道具(武器)であり、その使い方が問われる。「何のために使うのか(目的・使途)」「どう使うのか(方法・用途)」が重要であり、使い方を誤れば重大な結果をまねく。

本稿では、情報に関する問題を2つの観点から提示する。

1. 情報の非対称

ほとんどの情報は、誰でも、どこでも、どこからでも、いつでも、容易に取得することができる状況にある。それにもかかわらず、「情報の非対称」が、特に医療において、批判的用語として氾濫している。本来は、誉め言葉であろう(後述する)。適切に説明しない医療者が多いことは否定できない。相手に理解できるよう、丁寧に説明することが必要である。しかし、科学、技術、法務、経理等、医療以外の分野で、この語を批判的に使った例を筆者は知らない。

得手不得手(能力)や関心の対象の差は当然である。だからこそ分業が生まれ、専門性が成立する。わからないことは、ネットで検索すれば、大抵のことは詳細に情報を収集することができ、理解も容易になる。それでもわからなければ、専門家に相談すればよい。情報の非対称を否定したら、専門家の存在価値がなくなる。

2. 情報の理解

情報の意義・重要性を理解し、活用することができる経営者は少ない。取捨選択能力の問題であり、宝の持ち腐れになりがちである。

筆者は三十有余年、“情報をいかに活用するか”を基軸に経営を実践してきた。努力はしたが、必ずしもよい結果ばかりではなかった。情報の取り扱いが難しい。同じような情報でも、TPOにより意味合いが異なる。すなわち、状況判断が重要である。そのためには、判断の前提となる情報収集が必要であり、洞察力、瞬発力(時機が重要)、実行力が求められる。

情報は生もの(生鮮食品と同様)であり、鮮度(どの時点の内容か)が重視される。それ以上に、素材の信頼性(産地、生産者、有毒・有害性)、有用性(美味しさ・役立つか・合目的性)の吟味が必須である。素材とともに、料理・調理法(情報管理)が重要である。情報管理が困難な理由は、鮮度・信頼性・有用性を、いかに把握・確認・保証するかが明確でないことにある。

近年、AI(特に生成AI)の進展により、管理がますます困難になっている。これは、経営が困難な最大の要因である。機密情報・機微情報が、気づかないうちに外部に漏洩することがある。生成AIを利用しても、判断は人がすべきである。

漏洩だけではなく、搾取、改ざん、情報攪乱、情報システム停止等々が、日常茶飯である。

内部と外部の物理的境界(ネット接続、人的交流)と、機能的境界(連携、協働、委託)が不明確になっている。情報共有・周知、効率性を加味した情報管理の重要性が高まっている。

飯田修平(〔公財〕東京都医療保健協会医療の質向上研究所研究員、練馬総合病院質管理部部長・名誉院長)[病院経営][情報

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