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【識者の眼】「身元保証等サービスについて〜高齢者等終身サポート事業者の事例を通して」岡江晃児

登録日: 2025.10.20 最終更新日: 2025.10.28

岡江晃児 (NTTデータライフデザインケアライフデザイナー、ソーシャルワーカー)

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高齢者等終身サポート事業者が提供するサービスには様々なものがあるが、主に「身元保証等サービス」「死後事務サービス」「日常生活支援サービス」の3つにわけられる。このような事業では、家族と疎遠になった単身高齢者や、身寄りのない高齢者などから、「入院や手術のために連帯保証人を探すように言われたが、どうしたらよいか」「もし自分が亡くなったら、誰が身柄を引き取ってくれるのか」といった相談が寄せられている。

本稿では、こうした相談に対して高齢者等終身サポート事業者がどのように対応しているか、具体的な事例を通して紹介する。

手術を控えた65歳女性の相談

ある日、乳がんの手術を控えた65歳女性(Aさん)が相談に訪れた。Aさんには家族がなく、身寄りのない方であったが、元職場の友人とは良好な関係が続いており、経済的にも生活に大きな困難はないとのことであった。日常生活も自立しており、介護の支援も必要としていなかった。

数カ月前から胸のしこりが気になり、病院を受診したところ、精密検査の結果、乳がんと診断され、近々手術を受ける予定となった。しかし、医師から「入院や手術の際に身元保証等が必要」と告げられ、Aさんは「自分には家族も頼れる親族もいないため、どうしたらよいか」と不安になり、高齢者等終身サポート事業者に相談に来た。

Aさんに対して筆者は、「身元保証等サービス」においては、病院側が「身元保証人」にどのような役割(金銭的保証、身元の引き受け、緊急対応など)を求めているのかを確認すること、また、今回の入院や手術に際して身元保証が本当に必要であるのかどうかを、主治医や病院のソーシャルワーカーに再度確認することを提案した。加えて、今回の病気のことをすべて伝えている関係性の良好な元職場の友人がいるため、その友人が保証人として対応可能かどうか、また高齢者等終身サポート事業者の関与も含めて、主治医や病院ソーシャルワーカーに相談するように伝えた。

その結果、今回の入院・手術の状況や友人との関わり方(入院中に必要な物品の準備や見舞などは対応可能だが、身元保証等契約書への署名や万が一の対応等は難しい。本人自身も友人に過度な負担はかけたくないと考えている)をふまえ、当社の身元保証等サービスを利用することとなった。

支援者は、まず本人の思いに寄り添い、「誰に何を依頼したいのか」「あるいは誰には依頼したくないのか」を丁寧に聴き取る姿勢が不可欠である。たとえ戸籍上の家族であっても、長年の疎遠や過去の経緯から、本人が関係を望まないこともある。そのような場合、形式的に家族への依頼を促すことは、本人の精神的負担を増大させ、関係性をさらに悪化させるリスクを伴う。支援者は、家族関係の歴史、現在の連絡頻度、経済状況、感情的な結びつきなどを慎重にアセスメントし、「真にキーパーソンとなりうる存在は誰か」、本人の思いを引き出す必要がある。

岡江晃児(NTTデータライフデザインケアライフデザイナー、ソーシャルワーカー)[高齢者等終身サポート事業ソーシャルワーカー

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