感染性心内膜炎(infectious endocarditis:IE)は,弁膜や心内膜,大血管内膜に細菌集簇を含む疣腫を形成し,菌血症,血管塞栓,心障害などの多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患である。適切に奏効する治療を行わなければ,重篤な合併症を引き起こし,ついには死に至る疾患である。
▶診断のポイント
【症状】
IEの臨床経過には多様性があり,急速に心不全が悪化する症例も,慢性の経過をたどる症例もある。IEのほとんどの症例(90%)では発熱が認められる。易疲労感,食欲不振および体重減少など慢性炎症による症状を伴うこともある。慢性的に経過した症例では,脳梗塞や一過性脳虚血発作,腎梗塞や脾梗塞,腸腰筋膿瘍など塞栓症に伴う症状(約30%),関節痛や筋肉痛(約20%),糸球体腎炎など免疫複合体病の症状で発見されることも少なくない。組織破壊性が強いStaphylococcus aureusのような起炎菌では急性の経過をたどる傾向があり,溶血性連鎖球菌が起炎菌の場合には慢性の経過をたどることが多い。
【検査所見】
診断基準としては,修正Duke診断基準が広く用いられる。血液培養の陽性と心エコー図検査での確認(疣腫,膿瘍,弁穿孔,人工弁の新たな部分的裂開等)が重要である。また,CTやPET/CTの活用も増えており,特に人工弁置換術後の患者において有用とされている。
