転倒時など肩外側への強い外力により発症する肩鎖関節脱臼は,肩外傷疾患のうち約10%を占め,比較的高頻度に遭遇する疾患のひとつである。その主な病態は,肩鎖靱帯と烏口鎖骨靱帯(円錐靱帯,菱形靱帯)の損傷であるため,治療に際して,これらの靱帯損傷の程度を理解することが重要である。
▶診断のポイント
【診察所見】
肩鎖関節部の疼痛,腫脹,圧痛を認め,肩関節の水平内転により圧痛が増悪するcross-arm adduction testやAC resistance test,active compression testが診断に有用である。
【画像所見】
単純X線で肩鎖靱帯と烏口鎖骨靱帯の損傷や脱臼の程度を評価したRockwood分類が有用である1)。
〈Rockwood分類〉
typeⅠ:捻挫(X線:異常所見なし),typeⅡ:亜脱臼(X線:50%上方転位),typeⅢ:完全脱臼(X線:100%以上の上方転位),typeⅣ:後上方脱臼,typeⅤ:三角筋損傷を伴う高度脱臼(X線:200%以上の上方転位),typeⅥ:烏口突起下脱臼,にわけられる。
さらに近年,typeⅢの症例では肩鎖靱帯の安定性評価(前後方向の安定性)を可能とするcross body adduction view〔Alexander view(肩関節を内転させ,肩を突き出した状態で撮影)〕の追加撮影が推奨されている2)。cross body adduction viewにおいて,肩峰上に鎖骨の乗り上げを認めない(前後方向不安定性なし)症例をⅢaに,乗り上げを認める(前後方向不安定性あり)症例をⅢbに分類する。
