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【識者の眼】「世界陸上と私たちの健康─運動が心血管イベントを予防する」鍵山暢之

登録日: 2025.10.14 最終更新日: 2025.10.27

鍵山暢之 (順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学教室准教授)

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2025年の世界陸上も、大いに盛り上がりを見せました。トップアスリートたちが一瞬にすべてを賭ける姿は、観る人に強い感動を与えてくれます。

私自身、2025年に入ってから朝のランニングを続けています。単なる趣味ではなく、日々の健康を支える大切な習慣として取り組んでいます。走った距離や時間はスマートウォッチで記録し、それがグラフとして積み重なっていくのを見ると、「よし、今日も少し頑張ろう」と前向きな気持ちになります。

最近では、職場の仲間とランニングアプリを通じて走行距離を共有し、「今日はあの人がこれだけ走った」「あと少しで目標だね」といったやり取りをすることが、毎日の楽しみになっています。こうした“見える化”と仲間との交流が、運動を継続するための大きな原動力になっています。

さて、私が循環器内科医として、日々多くの患者さんと向き合う中で、高血圧や糖尿病などの心血管イベントリスクを抱える方には、「適度な有酸素運動を習慣にしましょう」とお話しすることがよくあります。米国心臓協会(AHA)や日本循環器学会などでは、息が少し切れる程度の中強度の有酸素運動を、週に90〜150分程度行うことを推奨しています。この運動習慣が、血圧・血糖・脂質改善、さらには心血管イベントの予防につながることは、多くの研究で示されています。もちろん、体力や既往歴に応じて調整する必要はありますが、多くの方にとって有益な目安となるでしょう。

デジタル技術の魅力は、単に数値を記録することにとどまりません。それらを“見える化”することで、自分の身体と対話できるようになり、さらには人とのつながりも生まれます。先ほどの職場でのやり取りのように、「今日はこのくらい」「明日はもう少し頑張ろう」と互いに励まし合うことで、運動が単なる義務ではなく、日々の楽しみに変わっていきます。スマートウォッチやアプリ、AIによる記録の分析、自分に適したリマインダー機能などは、健康行動を支えるパートナーになってくれます。

世界陸上の舞台に今から立つことは難しいかもしれません。しかし、運動を通して得られる達成感や将来の健康リスクの軽減は、誰もが手にすることができます。まずは、日々の歩数を意識したり、短いジョギングを取り入れたりすることから始めて下さい。きっと、より健やかな毎日が育っていくはずです。

鍵山暢之(順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学教室准教授)[健康行動][ランニング心血管予防

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