本稿では,子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症・付属器腫瘤・子宮頸部上皮内腫瘍を取り上げる。これらの疾患は,妊娠前に診断されることが多いが,無症状である場合,妊娠初期の内診や超音波検査で偶発的に発見される。妊娠合併症のリスク因子となるが,妊娠中の治療介入は限定的となる。今後,プレコンセプションケアの普及が望まれる。
▶診断のポイント
妊娠初期に経腟超音波検査で胎囊の部位を評価する際,子宮および付属器を慎重に観察する。腫瘤を認めた場合には,悪性の可能性を考慮し,腫瘍の大きさを評価する。子宮筋腫の場合,胎盤との位置関係が重要であり,胎盤と接している場合には常位胎盤早期剝離のリスクが高くなる。付属器腫瘤が径10cmを超える場合や,囊胞内に隔壁や小結節を認める場合には悪性を疑う。腫瘍マーカーは妊娠中に高値を示すことが多く,単純MRI検査を併用する。病期診断実施のための造影CT検査は許容される。最終的には手術摘出標本で病理組織学的診断を行う。妊娠初期にルテイン囊胞などの類腫瘍病変や子宮内膜症性囊胞を疑う場合には,自然消退の可能性があり,原則的には経過観察する。子宮頸部細胞診は妊娠初期のスクリーニング検査として行うことが多い。NILM(negative for intraepithelial lesion or malignancy)以外の所見を認めた場合には,非妊娠時と同様にハイリスクHPV検査,コルポスコピー,生検組織診を行う。ハイリスクHPV陰性のASC-US(atypical squamous cells of undetermined significance)を除き,分娩3カ月以内に再検査を実施する。