真菌による角膜の感染症である。多くは炎症を伴い真菌性角膜炎を呈する。しかし,炎症反応が明らかでない場合もあり,「角膜真菌症」としている1)。
また,真菌は形態学的に酵母様真菌(以下,酵母菌)と糸状菌に分類され,感染契機,臨床所見,治療なども多少差異がある。酵母菌の起炎菌は,主にCandida属のCandida albicans,ついでC. parapsilosisが多く,C. glabrata,C. kruseiなどがある。
基本的に健常眼に生じることは稀で,何らかの契機により発症する。発症リスクは,酵母菌では眼表面疾患に対するステロイド点眼,角膜移植などの術後の縫合糸とステロイド点眼,全身の免疫抑制状態などである。糸状菌は植物の表面や土壌に生息していることから,植物による突き眼,農作業中などの外傷,さらにコンタクトレンズ装用やステロイド点眼が感染リスクとなる。
▶診断のポイント
まずは,問診で上記の背景を聞き出す。
酵母菌は,比較的境界明瞭な円形の病変で,角膜実質浅層に限局していることが多く,細菌性角膜炎と類似した病変である。糸状菌は,羽毛状潰瘍(hyphate ulcer)と言われる特徴的な白色・灰白色の境界不明瞭な病巣を呈することが多い。角膜実質内の病変とともに角膜後面プラーク(endothelial plaque)の形成,前房内炎症,前房蓄膿をきたすこともあり,重症化すると角膜融解をきたし,角膜穿孔に至る。一方,角膜上皮下の実質浅層に限局した病巣の場合は炎症反応が乏しいこともある。
酵母菌,糸状菌のいずれも,臨床所見のみではほかの角膜感染症との鑑別が難しい場合や混合感染もあり,抗菌薬点眼で十分な改善がない場合は,真菌も疑い擦過して培養する。
