検索

×
絞り込み:
124
カテゴリー
診療科
コーナー
解説文、目次
著者名
シリーズ

腹膜偽粘液腫[私の治療]

登録日: 2025.10.12 最終更新日: 2025.10.12

五井孝憲 (福井大学医学部第一外科教授,日本腹膜播種研究会理事) 小練研司 (福井大学医学部第一外科講師) 森川充洋 (福井大学医学部第一外科)

お気に入りに登録する

腹膜偽粘液腫(pseudomyxoma peritonei:PMP)は臨床症状に対しての疾患名である。代表的な症状としては,粘液産生性腫瘍からつくられるゼリー状腹水が腹腔内全体に多量に貯留した状態で,そのほか,ゼリー状腹水がなくても粘液癌からの粘液産生性の腹膜播種状態や,腹水が少量であっても大網への多発性転移,巨大な卵巣転移も含まれる。
わが国での発生頻度は人口100万人当たり1.5人,診断時年齢は50~70歳代が多く男女比は1:2,腫瘍の発生臓器は虫垂が約90%,卵巣が約6%,尿膜管が約1%,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)が0.1%と報告されている。

▶診断のポイント

特異的な症状はなく,日本腹膜播種研究会の「腹膜播種診療ガイドライン」においては,診断および治療法選択にCT検査が推奨されている。CT検査では,大網への浸潤によるomental caking,実質臓器表面での粘液貯留によるscalloping(扇状切り欠き)が認められる。MRI検査は弱い推奨度であるもののT2強調で著明な高信号として,T1強調では低信号として認められ,また粘液中の隔壁構造は特徴的でCTでとらえられないこともあり,diffusion-weighted image(DWI)が有効な場合もある。

分類法はいくつかあるが,Ronnett分類では組織型が悪性であるperitoneal mucinous carcinomatosis(PMCA),細胞成分が少なく組織型が良性のdisseminating peritoneal adenomucinosis(DPAM),PMCAとDPAMの双方の成分を含有するか,または良性とも悪性とも判断できない中間悪性型のPMCA intermediate malignancy(PMCAim)の3群に分類されている。


1 2