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【識者の眼】「医療DX③:電子処方箋について」上野智明

登録日: 2025.10.08 最終更新日: 2025.10.08

上野智明 (日本医師会ORCA管理機構株式会社取締役副社長)

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電子処方箋とは、紙の処方箋を電子化したもので、医師が処方情報を「電子処方箋管理サービス」に登録し、薬局の薬剤師がその情報を取得・調剤するという仕組みです。主なメリットとしては、併用禁忌薬の確認や重複投薬の回避に役立つ点が挙げられます。

電子処方箋の導入に当たっては、まず被保険者証のオンライン資格確認が正常に動作していることが前提となります。さらに、院内の電子カルテやレセプトコンピュータで使われている医薬品名や用法のマスタを、電子処方箋対応の「国の標準のマスタ」に完全に紐づける作業が必要です。これに加え、電子署名を行うために医師資格証(HPKIカード)の取得と設定も求められます。

2024年12月には、電子処方箋のシステムが一時停止する事態が発生しました。主な原因は、医療機関が独自に使用していた「ダミーコード」や「ハウスコード」と、国の標準マスタとの間に不整合が生じたことによるものです。一方で、当時整備されていた国の標準のマスタ自体にも未整備な点も多く、現場ではやむなくダミーコードやハウスコードを使わねば電子処方箋を発行することができないという事情もありました。このような問題を受けて、電子処方箋管理サービスは2025年9月に改修(医薬品のダミーコードを受けつけない)されました。

医薬品のコードは、認可・承認段階から、卸業者と医療機関との受発注、さらには現場での投薬・処置に至るまで、様々なコードが使われているのが実情です。これらのコードは容易に変換することができないことから、現場での混乱や医療従事者の作業負担の要因となっています。こうした状況をふまえ、国は医薬品コード体系の関係性を整理した「統合マスタ」を整備・維持管理する方針を公表しました。

電子処方箋の導入率は、診療所で約2割、病院では約1割にとどまっており、普及はまだ限定的です。国は補助金制度も設けて支援しているものの、リフィル処方や院内処方といった機能が段階的に追加されていることもあり、特に病院では既存の院内システムとの接続調整が問題となり、普及が進んでいないようです。こうした状況を受けて国は、電子カルテ/共有サービスと一体的な導入を進める方針を打ち出し、「患者の医療情報を共有するための電子カルテを整備するすべての医療機関への導入を目指す」という新たな目標を掲げています。

電子処方箋の導入に当たっては、段階的な運用開始をお勧めします。たとえば、初期段階では紙の処方箋(引換番号つき)のみを発行し、システム運用に慣れてから患者に対して電子処方箋か紙の処方箋かを選択可能にする方法です。このような運用は、前述の用法マスタの紐づけ作業などの問題や、自由診療など紙でしか対応できないケースへの対応など、医師本人や事務職員の習熟期間の確保にもつながります。

次稿は、診療報酬改定DXを中心にした話題をお届けしたいと思います。

上野智明(日本医師会ORCA管理機構株式会社取締役副社長)[医療DX][電子処方箋]

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