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破傷風トキソイドの安定供給が危ない…。「破トキ打っておいて」がもう言えない日が来るかも。【今すぐ知りたい血清療法の実臨床 謎となぜ55】

登録日: 2025.10.24 最終更新日: 2025.11.04

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 毒蛇咬傷=DIC? 実はヘビの種類によって病態生理が違います。救急・集中治療に役立つ血清療法の知識と,今話題の破傷風トキソイドの現状をお届けします(全4回の4回目)
※本稿は,一二三亨 『今すぐ知りたい血清療法の実臨床 謎となぜ55』の一部を抜粋・編集したものです。

謎となぜ
今まで当たり前のように看護師さんに「破トキ打っておいて」と言っていた,あの破トキ(破傷風トキソイド)ですが,「在庫がもうありません」と言われる日が来るかもしれません。どういうことでしょうか? 一緒に破傷風トキソイドの現状を確認したいと思います。

医薬品の安定供給と破傷風トキソイド

少し,医薬品の簡単な復習です(図1)。医薬品には通常,製造メーカーがあり,その医薬品をそのまま販売することもあれば,別のメーカーが販売することもあります。そのルートがきちんと整って初めて,医薬品が安定供給されて,病院で患者さんに投与することができます。

先生方は,COVID-19流行下,今まで当たり前だった医薬品の安定供給が崩れたことを経験しました。多くの医薬品(たとえばアセトアミノフェン,鎮静薬のプロポフォール,さらにはノルアドレナリンまで)が品薄となり,改めて安定供給の大切さを実感した出来事でした。
さて,それでは破傷風トキソイドはいかがでしょうか? 2015年までは5社で製造,4社で販売していたのですが,2020年以降急激に製造中止,販売中止となり,2023年時点では製造が2社,販売が1社のみとなってしまいました(図2)。

では,なぜこのようなことになったのでしょうか? それは簡単で,利益にならないからです。ただし,メーカー側もただそれを傍観していたわけではなく,2020年の薬価改定で427円から644円に1.5倍に値上がりしました。しかしながら,インフルエンザワクチンのように大量に何千万人が接種するわけでもなく,たかだか数十万人が年間接種する程度ですので,マーケットとしては厳しいのが現状です(表11)

謎となぜに対する答え
2020年以降,破傷風トキソイドの製造,販売メーカーがそれぞれ製造,販売を中止し,現在では製造メーカー2社,販売メーカー1社となっています。その根本的な原因は儲けの部分であり,今後も厳しい状況が続いています。

文 献
1) 日本ワクチン産業協会:2022 ワクチンの基礎. ワクチン類の製造から流通まで.
http://www.wakutin.or.jp/medical/pdf/kiso_2022.pdf#page=58](2023年10月13日閲覧)


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