尿道炎とは,病原微生物が男性の外尿道口から侵入して炎症を起こした状態であり,一般的に性行為を契機とする性感染症を指す。
▶診断のポイント
尿道炎の主な症状は排尿痛,頻尿,尿道分泌物であり,感染契機となる性行為が存在する。初尿で膿尿を認めることが多く,Chlamydia trachomatisによる尿道炎では時に肉眼的血尿が主訴となることもある。診断は潜伏期間,排尿痛の程度,尿道分泌物の性状で淋菌性か,非淋菌性かを鑑別する(表)。
確定診断は,淋菌は淋菌培養もしくは核酸増幅検査(NAATs)で,C. trachomatisとMycoplasma genitaliumはNAATsで,Trichomonas vaginalisは尿道分泌物または初尿沈渣の直接鏡検,培養またはNAATsで行う。
いずれの尿道炎も初診時には確定診断の結果が出ていないため,淋菌性か非淋菌性かを見きわめて治療を開始する。非淋菌性尿道炎を疑った場合には,C. trachomatisおよびM. genitaliumを念頭に置いた初期対応が重要となる。可能であれば初診時に淋菌,C. trachomatis,M. genitalium/T. vaginalisのNAATsを実施(同時同定検査のみ)しておくことが望ましい。
尿道炎を疑って診察する場合,発熱を伴う場合には前立腺炎や精巣上体炎を疑う。また,男性同性間性的接触者(men who have sex with men:MSM)である場合には,HIVやエムポックス(サル痘)の合併も念頭に置くべきである。近年,感染者数の増加が問題となっている梅毒をはじめ,性器ヘルペスや尖圭コンジローマなど,ほかの性感染症の合併も考慮して,症状と初尿検尿だけでなく,性器や肛門周囲など局所の診察を怠ってはならない。