「ひきこもり」は診断名や疾患単位ではなく,「不登校」などと同様に,1つの「状態(condition)」を指す言葉である。厚生労働省研究班は,その状態を以下のように定義した。①6カ月以上社会参加していない,②非精神病性の現象である,③外出していても対人関係がない場合はひきこもりと考える1)。内閣府の調査結果から,日本では全世代にわたり100万人以上の人がひきこもっている可能性が示唆された。ひきこもり期間の長期化と,当事者や家族の高齢化も深刻な問題である2)。
▶診断のポイント
ひきこもりは診断的には「統合失調症」「発達障害」「パーソナリティ障害」と誤診されやすいが,生活歴を慎重に聴取すれば鑑別はそれほど困難ではない。長期のひきこもり状態から二次障害として精神症状が生ずる場合があり,その主なものとして対人恐怖,強迫行為,うつ気分,被害妄想,家庭内暴力などがある。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
ひきこもりは一義的には疾患ではないため,治療は広義の支援の一部ということになる。医師が関わることの意義は,①発達障害や統合失調症などの精神障害を鑑別すること,②二次障害としての精神症状の治療,③精神療法的な関わり,そして④家族相談である。厚生労働省のガイドラインによれば,治療的支援としては,①家族支援,②個人療法(精神療法と薬物治療),③集団療法,④ソーシャルワークの4段階がある。