化膿性汗腺炎(hidradenitis suppurativa)は腋窩や臀部に発生する炎症性疾患である。再発性であり,重症化すると患者の生活の質を著しく障害する。また,わが国では感染症と考えられていたため,病態が正しく認識されていないことが多い。近年の研究により本症の病態生理は毛包を中心とした炎症反応であり,汗腺の炎症や感染症ではないことがわかってきた。病態生理が解明されるに伴い生物学的製剤など新たな薬剤の開発が進んでいる。
▶診断のポイント
腋窩,臀部,鼠径部など特徴的な部位に炎症と排膿を繰り返す場合は本症を疑う。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
疼痛,排膿,悪臭など患者の生活の質を障害する疾患であり,慢性的な経過をたどるので,生活の質の改善を目標とする。
「化膿性汗腺炎診療の手引き2020」を参考に薬物療法と外科的切除を適宜組み合わせて治療する。外科的切除が可能な場合は優先するが,炎症が強い場合や顔面などの手術瘢痕が目立つ部分では先に薬物療法を行うことも検討する。薬物療法は軽症~中等症の症例において試みる。初期にはクリンダマイシン外用またはテトラサイクリン系抗菌薬の内服を行う。この治療で効果がない場合はクリンダマイシン内服を行う。海外のガイドラインではリファンピシン内服が推奨されているが,わが国では未承認である。なお,クリンダマイシン単独でも同等の効果があると報告されている。
内服療法で改善しない場合はアダリムマブまたはビメキズマブの使用を検討する。外科的切除を前提に加療する場合でも,術前に投与を中止しない。