血清ナトリウム(Na)濃度異常はNa量の異常ではなく,体液浸透圧(正確には有効浸透圧=張度)の異常である。張度とは,浸透圧のうち細胞内外の水の移動に寄与するもので,Naのほか,ブドウ糖や外因性浸透圧物質(マンニトール等)が形成し,尿素は関与しない。低ナトリウム血症は細胞外液の張度変化により,細胞サイズが変化することで(特に中枢神経)症状が出現する病態である。
▶診断のポイント
- 血漿浸透圧を測定し,偽性低ナトリウム血症(高蛋白血症や高トリグリセライド血症)や高張性低ナトリウム血症(高血糖や外因性浸透圧物質)を除外する。
 
- 高度低ナトリウム血症(血清Na<125mEq/L)の多くは, 抗利尿ホルモン(ADH)の相対的・絶対的過剰による,細胞外液量がほぼ正常な低ナトリウム血症であり,低尿酸・低窒素血症を伴うことが多い。一方,細胞外液量欠乏・過剰(腎不全・心不全等)による低ナトリウム血症は,血清尿酸・BUNは高値となる。
 
- 症候性(中等症:嘔気・頭痛・見当識/意識障害,重症:昏迷・昏睡・痙攣・嘔吐)や低ナトリウム血症の程度(軽度130~<135mEq/L,中等度125~<130mEq/L,高度<125mEq/L),病歴などから,治療の緊急性・必要性を判断する。
- 原則として,症状が強ければ,積極的な治療方法(高張食塩水投与など)で,症状が改善する程度まで早急な治療が必要である。症状が軽度であれば,緩徐に(数日以上かけて)治療する必要がある(急速な補正は重症な合併症=浸透圧性脱髄症候群を生じる)。一方,症候性でなくても,低ナトリウム血症の程度が強い場合,時間をかける必要はあるが,しっかりと治療を行うことが重要である。
- 低ナトリウム血症は,意識障害,嘔気・嘔吐などの症状や病歴から,細胞外液量低下があると判断されがちである。しかし,低血圧・頻脈などがなく,低尿酸・窒素血症を伴う場合,細胞外液量低下はない(治療を等張液投与のみとしない)。
 
           
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