ヘモクロマトーシスは鉄過剰症のひとつである。種々の鉄代謝異常により鉄過剰となり,諸臓器の実質細胞に鉄が沈着して組織に障害をもたらす。臨床徴候として肝障害,肝硬変,肝癌,糖尿病,皮膚色素沈着,心不全や,甲状腺・副甲状腺・下垂体・性腺の機能低下が挙げられる。
▶診断のポイント
血清鉄,トランスフェリン飽和度,血清フェリチン値の上昇により本疾患を疑う。遺伝性(原発性)は遺伝子診断による。続発性の大部分である輸血後鉄過剰症は,血清フェリチン値500ng/mL以上かつ総輸血量20単位(小児はヒト赤血球液50mL/kg)以上により診断する。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
遺伝性には,従来の分類でtype 1(HFE遺伝子:HFE変異),type 2A(ヘモジュベリン遺伝子:HJV変異),type 2B(ヘプシジン遺伝子:HAMP変異),type 3(トランスフェリン受容体2遺伝子:TFR2変異),type 4A(機能低下型フェロポルチン遺伝子:SLC40A1変異)とtype 4B(機能亢進型フェロポルチン遺伝子:SLC40A1変異)がある。しかし,これらにおいて同じ分類に属しても異なった臨床像が混在しており,また,この分類に含まれないヘモクロマトーシスもあることなどから,最近,HFE関連,非HFE関連,二遺伝子性,分子的定義不能,の4つに区分する新分類が提唱されている1)。ヘモクロマトーシスはこれら遺伝性のものを指すことが多くなっている。わが国ではきわめて稀であるが,(遺伝性)ヘモクロマトーシスの症例報告があり2),報告されている例では,HFE変異がほとんど存在せず,特有の複数の鉄代謝関連分子遺伝子変異の組み合わせによるヘモクロマトーシスであることに留意する必要がある。
