▶私の治療方針・処方の組み立て方
不整脈を伴う場合,心不全患者,ジギタリス製剤内服中の場合は4.0mEq/Lを目標とする1)。それ以外の場合,一般的には正常範囲内を目標とする。
▶治療の実際
低カリウム血症はしばしば低マグネシウム血症を伴う。必ず血清Mg濃度を測定し,低値の場合,Mg補充を同時に行う。
【軽症例】
血清K濃度3.0mEq/L以上の場合は経口補充を原則とする。
一手目 食事によるK補充
多くの症例は食事にて補充可能である。バナナ(10mEq/本),アボカド(20~30mEq/個),オレンジジュース(8mEq/200mL)などはK含有量が多い。ただし,クエン酸塩の形をとるため,吸収は塩化カリウムより劣る。
二手目 〈一手目に追加〉薬物治療:塩化カリウム「St」600mg(Kとして8mEq)徐放錠(塩化カリウム)1日1~3錠 分1~3(食後)
三手目 〈フロセミド,チアジド系利尿薬服用中で利尿効果を増強したい場合,処方変更または二手目に追加〉セララ®50mg錠(エプレレノン)1回1錠1日1回(朝食後)(二手目の塩化カリウムとは併用禁忌),またはアルダクトン®A25mg錠(スピロノラクトン)1回1錠1日1回(朝食後)より開始(男性では女性化乳房等の女性ホルモン作用が出やすいが,塩化カリウムとの併用禁忌の記載は添付文書上はない)
【重症例】
筋麻痺,横紋筋融解,重症不整脈等を伴う場合(多くは血清K濃度≦2.5mEq/L)は以下とする。
一手目 生理食塩水500mL+KCL補正液1mEq/mL(20mL)
infusion pumpを用いて10〜20mEq/時の速度で投与する。最大40mEq/時まで投与可能である。20mEq/時以上の速度で投与する場合は上記以上の濃度のKCL溶液を用いる必要があり,末梢静脈では静脈炎を生じるので,より太い静脈からの投与を行う。必ず心電図モニターを装着し,2時間ごとに血清K濃度測定を行う
【特殊な症例】
甲状腺機能亢進症に伴う低カリウム性周期性四肢麻痺では,K補充によりリバウンド性の高カリウム血症を生じることがある。K補充で補正されない場合には以下とする。
一手目 インデラル®2mg注(プロプラノロール塩酸塩)1回1mg(緩徐に静注)
▶専門家へのコンサルト
慢性的に3.0mEq/L以下の低カリウム血症を示す症例で,ループ利尿薬,下剤などの明らかな原因が不明である場合,通常の治療で正常化しない場合などは,尿細管障害,内分泌疾患等が考慮され,専門家へのコンサルトを考慮する。
【文献】
1) Cohn JN, et al:Arch Intern Med. 2000;160(16):2429-36.
林 松彦(河北総合病院臨床教育・研修部部長)