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デジタル世代の医師養成における系統的キャリアデザイン教育の重要性[提言]

登録日: 2025.03.31 最終更新日: 2025.09.22

駒澤伸泰 (香川大学医学部地域医療共育推進オフィス特命教授/医学教育学講座) 横平政直 (香川大学医学部医学教育学講座教授)

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3 デジタル世代の医学生の学修者特性を意識したキャリア教育が必要

現在の医療系学生の多くはZ世代が大多数であり,指導する医師たちは主にX世代やY世代である。Z世代は,急速なテクノロジーの進化と社会の変化の中で成長した世代であり,デジタルネイティブとして知られている。彼らはスマートフォンやインターネットを日常的に利用し,社会的な多様性を尊重し,創造性や自己表現を重んじる傾向が強い。また,リアルタイムで情報にアクセスし,迅速なコミュニケーションを得意とするが,情報過多の環境で適切な判断を行うことが課題となっている6)

一方,X世代やY世代はデジタルイミグラントとされ,一般的にはZ世代ほどデジタル技術に習熟していない。医学教育カリキュラムを構築する際にはこのような学修者特性を十分に考慮する必要がある。例として,X/Y世代が感銘を受けた著名な医療者や研究者の困難克服に関する講義が,Z世代の学生にとって必ずしも効果的とは限らない。我々は,Z世代の学生が持つ情報収集能力と能動性を十分に重視し,それを基盤とした体系的なキャリアデザイン教育の重要性を強く認識している。

4 シミュレーションを含めた学修者主体の「系統的キャリアデザイン教育」の可能性

現在の医学生は,データ駆動型社会の中で,予測が難しい未来の医療界を担う。また,前述の医学教育モデル・コア・カリキュラムにおいても,医師としてのキャリアの多様性が重視されている。卒前からの系統的なキャリアデザイン教育は,医学生の自己調整学習力を高め,生涯学習の活性化につながる可能性がある。
我々,香川大学医学部では,医学生のキャリア意識を向上させるために,図1に示すイメージに基づいた系統的なキャリアデザインカリキュラム導入をめざしている。系統的キャリアデザイン教育の基本として「自分を知る」「何を得たいか」「何が社会にできるか」を重視している。

すなわち低学年ではデータサイエンス・AI,多職種連携,プロフェッショナリズム系統の授業とともに,それぞれの医療界での役割を考える「ミッションデザイン」を意識してもらう。特に,2年次の「行動科学とチーム医療」では,授業中に「それぞれの医療界におけるミッション」を書き出すことで,自らの役割を考える時間を設けている。次に中学年では,学修者主体性を高めるために,臨床医学の概要,専門医制度や医学博士制度を学修するだけでなく「キャリアデザインシミュレーション」というシミュレーション教育を実施している。このシミュレーションでは,医学生が専門医取得や博士号取得を含むライフプランを時系列で作成し,予期せぬ出来事が発生した場合にどのように対処するかを省察し,ディスカッションを通じて「キャリアを考え,変化に対応するスキル」を養うことをめざしている。

我々の系統的キャリアデザイン教育では,基礎的なコンピテンシーを身につけた後,高学年の診療参加型臨床実習で多様な指導医との交流を通じて,実践的なキャリアデザイン能力をさらに発展させることができる。これにより,卒後における生涯学習に接続できると考えている。
デジタル時代における多様な医師キャリアの形成を支援する観点からも,現代の医学生の学修特性に適合した系統的なキャリアデザイン教育の導入が期待されている。


【文献】

1)駒澤伸泰, 他:日シミュレーション医療教会誌. 2024; 12:56-9.

2)駒澤伸泰:医学教育. 2024;55(1):50-1.

3)文部科学省:医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版).
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/iryou/mext_00005.html(2024年12月18日アクセス)

4)Komasawa N, et al:BMJ Open. 2024;14(1): e076982.

5)駒澤伸泰:医学教育. 2021;52(4):348.

6)Komasawa N, et al:Cureus. 2023;15(10):e46883.


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