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糖尿病合併症(神経障害)[私の治療]

登録日: 2025.03.23 最終更新日: 2026.02.21

麻生好正 (獨協医科大学内科学(内分泌代謝)教授/同大学病院病院長)

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Ⅱ.有痛性神経障害(神経障害性疼痛)

▶私の治療方針・処方の組み立て方

疼痛は,患者を消耗させQOLの低下をまねくため,早期から治療介入に努める。血糖コントロールの改善では疼痛緩和は期待できないため,躊躇せず薬物療法を行う。

第一選択薬としては,セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬〔サインバルタ(デュロキセチン塩酸塩)〕,Caチャネルα2δリガンド〔リリカ(プレガバリン),タリージェ(ミロガバリンベシル酸塩)〕が推奨される。いずれも少量から開始して,漸増することが大原則である。投与3カ月後に効果を評価し,効果が得られないときは中止して,他の薬剤に変更する。頻度の高い副作用として,リリカ,タリージェには眠気(傾眠),めまい,サインバルタには胃腸症状(嘔気・嘔吐など),眠気がある。二手目または三手目として,弱オピオイドのトラマドールとアセトアミノフェンの合剤を検討する。

▶治療の実際

一手目 サインバルタ20mgカプセル(デュロキセチン塩酸塩)1回2カプセル1日1回(朝食後),またはタリージェ15mg錠(ミロガバリンベシル酸塩)1回1錠1日2回(朝・夕食後),またはリリカ75mgカプセル(プレガバリン)1回1カプセル1日2回(朝・夕食後)

サインバルタは朝食後1カプセルから開始し,効果不十分な場合には1日3カプセル(60mg)まで増量することができる。タリージェは初期用量1回5mgを1日2回経口投与し,その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔をあけて漸増する。リリカは症状の改善・副作用を評価して1回2カプセル1日2回まで増量する。


二手目 〈一手目に追加〉一手目のサインバルタとタリージェの併用,またはサインバルタとリリカの併用

三手目 〈処方変更〉トラムセット配合錠(トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン)1回1錠1日4回(毎食後・就寝前)

投与間隔は4時間以上あけること。薬物依存に注意が必要である。

Ⅲ.自律神経障害

▶私の治療方針・処方の組み立て方

投与中の薬剤が自律神経障害の悪化因子になっている場合は,投与を中止することが重要である。適切な治療により患者のQOLの改善が得られる。非薬物療法および薬物療法があるが,薬物療法は対症療法の域を出ないため,効果が期待できない場合は漫然と投与せず,速やかに中止する。

▶治療の実際

【起立性低血圧】

最初に,悪化因子である脱水および利尿薬,三環系抗うつ薬,血管拡張薬,SGLT2阻害薬などの薬剤を評価し,可能であれば原因となる薬剤を中止する。十分な水分補給,適切な食塩摂取,下肢の弾性ストッキングの常用,起立時に急な頭位変換を避けゆっくりと動く,などを指導する。


一手目 メトリジン2mg錠(ミドドリン塩酸塩)1回1錠1日2回(朝・夕食後),またはリズミック10mg錠(アメジニウムメチル硫酸塩)1回1錠1日2回(朝・夕食後)

二手目 〈処方変更〉ドプス100mg OD錠(ドロキシドパ)1回1錠1日3回(毎食後)

三手目 〈処方変更〉フロリネフ0.1mg錠(フルドロコルチゾン酢酸エステル)1回1錠1日1回(朝食後)

坐位あるいは仰臥位の血圧が180/110mmHg以上になった場合,中止する。心不全症状増悪に注意が必要である。

【胃不全麻痺】

少量で頻回の食事摂取,十分な咀嚼,高繊維食あるいは高脂肪食の制限などを指導する。


一手目 プリンペラン5mg錠(メトクロプラミド)1回1錠1日3回(毎食前),またはナウゼリン10mg錠(ドンペリドン)1回1錠1日3回(毎食前),またはガスモチン5mg錠(モサプリドクエン酸塩水和物)1回1錠1日3回(毎食前)

二手目 〈処方変更〉ツムラ大建中湯エキス顆粒2.5g(大建中湯)1回2包1日3回(毎食前または食間)

【排尿障害(神経因性膀胱)】

薬物療法としては,弛緩型の排出障害の場合はα1遮断薬が選択され,蓄尿障害(過活動性)の場合は,コリン類似薬,抗コリンエステラーゼ薬が候補になる。ただし,薬物療法は十分な効果が期待できないことが多い。効果が得られない場合は漫然と使用せず,速やかに中止する。薬物療法で効果が得られない場合,手圧排尿(クレーデ法),時間排尿を指導する。


一手目 ミニプレス0.5mg錠(プラゾシン塩酸塩)1回1錠1日3回(毎食後),またはベサコリン散5%(ベタネコール塩化物)1回0.2g 1日3回(毎食後),またはウブレチド5mg錠(ジスチグミン臭化物)1回1錠1日1回(朝食後)

二手目 〈治療変更〉間欠的な自己導尿(カテーテルを用いて)の指導

残尿を認める進行した患者に対して行う。同時に,泌尿器科医師に相談する。

【勃起障害】

喫煙,過度のアルコール摂取,高脂肪食などの生活習慣を是正させることが重要である。


一手目 バイアグラ50mg錠(シルデナフィルクエン酸塩)1回1錠(性交1時間前,食後2時間以上あけて),またはバルデナフィル 10mg錠(バルデナフィル塩酸塩水和物)1回1錠(性交1時間前)(保険適用外),またはシアリス10mg錠(タダラフィル)1回1~2錠(性交1時間前)

二手目 〈治療変更〉陰圧式勃起補助具,プロスタグランジン陰茎注射など

泌尿器科医師へ紹介する。

▶患者への説明ポイント

神経障害性疼痛の治療薬には各薬剤に特異的で頻度の高い副作用がある。リリカ,タリージェには眠気(傾眠),めまい,浮腫,腎障害,サインバルタには胃腸症状(嘔気・嘔吐など),眠気(傾眠)があるため,投与前に必ず副作用について患者に十分説明する。

鎮痛効果は,一般的な痛み止めより,ゆっくりと現れることも説明する。

神経障害性疼痛には心理的な要因が多分に影響していることも多いため,患者の不安を取り除くことが重要となる。たとえば,「糖尿病性神経障害による疼痛は自然に治癒する経過をたどり,いずれは軽減する」ことを患者に説明する。

【参考資料】

▶ 日本糖尿病学会, 編:糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024.

▶ American Diabetes Association:Diabetes Care. 2024; 47(Suppl 1):S231-43.

▶ 麻生好正, 編:徹底解説!糖尿病合併症 管理・フォローアップ. 文光堂, 2021.

麻生好正(獨協医科大学内科学(内分泌代謝)教授/同大学病院病院長)


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