▶治療の実際
【急性肺血栓塞栓症(低リスク群,中間[低]リスク群)】
一手目 へパリンNa注(ヘパリンナトリウム)1回80IU/kg(静注)
酸素投与を行いSpO2>93%を保つ。
二手目 〈処方変更〉イグザレルトⓇ15mg錠(リバーロキサバン)初期3週:1回1錠1日2回(食後),以降:1回1錠1日1回(食後),またはエリキュースⓇ5mg錠(アピキサバン)初期1週:1回2錠1日2回(食後),以降:1回1錠1日2回(食後),またはリクシアナⓇ錠(エドキサバントシル酸塩水和物)体重60kg超:1回60mg 1日1回(食後),体重60kg以下,もしくはCcr<50mL/分,もしくはP糖蛋白質阻害薬使用例:1回30mg 1日1回(食後)
【急性肺血栓塞栓症(中間[高]リスク群)】
一手目 へパリンNa注(ヘパリンナトリウム)初回:80IU/kg(静注),以降:18IU/kg/時でAPTTをコントロール値の1.5~2.5倍に調節(持続静注)
酸素投与を行いSpO2>93%を保つ。
二手目 〈処方変更〉「低リスク群,中間[低]リスク群」の二手目,またはワーファリン1mg錠(ワルファリンカリウム)1回1~5錠(PT-INR 1.5~2.5に調節)1日1回(食後)〔PT-INR>1.5まではヘパリンNa注(ヘパリンナトリウム)を併用〕
【急性肺血栓塞栓症(高リスク群)】
一手目 「中間[高]リスク群」の一手目のヘパリン治療,ドブトレックスⓇ注(ドブタミン塩酸塩)3~20μg/kg/分(持続静注)もしくはカコージンⓇ注(ドパミン塩酸塩)3~20μg/kg/分(持続静注)併用
二手目 〈一手目に追加〉クリアクターⓇ注(モンテプラーゼ)1万3750~2万7500IU/kg(2分間で静注,ヘパリンと併用),または緊急肺塞栓除去術,またはカテーテル治療
【慢性血栓塞栓性肺高血圧症】
一手目 ワーファリン1mg錠(ワルファリンカリウム)1回1~5錠(PT-INR 1.5~2.5に調節)1日1回(食後),またはイグザレルトⓇ15mg錠(リバーロキサバン)1回1錠1日1回(食後),またはエリキュースⓇ5mg錠(アピキサバン)1回1錠1日2回(食後),またはリクシアナⓇ錠(エドキサバントシル酸塩水和物)体重60kg超:1回60mg 1日1回(食後),体重60kg以下,もしくはCcr<50mL/分,もしくはP糖蛋白質阻害薬使用例:1回30mg 1日1回(食後)
酸素投与を行いSpO2>93%を保つ。
二手目 〈一手目に追加〉アデムパスⓇ0.5mg錠(リオシグアト)1回1錠1日3回(食後)1回0.5~1mgで開始し,1回2.5mgまで増量,またはウプトラビⓇ0.2mg 錠(セレキシパグ)1回1錠1日2回(食後)1回0.2mgで開始し,1回1.6mgまで増量
三手目 〈二手目に追加〉肺動脈内膜摘除術,またはバルーン肺動脈形成術,または二手目で使用しなかったほうの薬剤
▶偶発症・合併症への対応
ヘパリン起因性血小板減少症を発症した場合,ヘパリンの投与を中止し,代替抗凝固薬としてノバスタンⓇHI注(アルガトロバン水和物)0.7μg/kg/分で開始(持続静注),APTT 1.5~2倍に維持する。
▶専門家へのコンサルト
原因不明の息切れ患者では,肺血栓塞栓症を疑うことが重要で,d-dimerが陽性の場合や安静時または歩行時SpO2の低下がみられる場合は専門家へ紹介する。
【文献】
1)日本循環器学会, 他:肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断, 治療, 予防に関するガイドライン(2017年改訂版).
https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/
田邉信宏(千葉県済生会習志野病院肺高血圧症センター長)