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周期性四肢麻痺[私の治療]

登録日: 2024.11.21 最終更新日: 2025.11.12

久留 聡 (国立病院機構鈴鹿病院脳神経内科/院長)

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▶私の治療方針・処方の組み立て方

正確な病型診断に基づいて,発作時の急性期治療と発作予防に関して治療方針を立てる。

【急性期治療】

発作時には血清カリウム値のチェックが必須であり,麻痺症状を観察し,血清カリウムおよび心電図をモニターしながら,カリウムの補正を行う。急速なカリウム補充は心停止を起こすため禁忌である。発作が軽度で自然軽快が見込める場合は観察のみでよい。

【発作予防】

生活指導と予防薬投与を行う。生活指導は,HypoPPの場合,誘因となりうる過剰な運動や飲酒,炭水化物の過剰摂取をなるべく避ける。HyperPPの場合は寒冷,空腹を避けること,発作が起こりそうな予兆があれば食事を摂取することを勧める。

予防薬としてアセタゾラミドは両者に対し有効である。HypoPPには抗アルドステロン薬,徐放性カリウム製剤を使用する。HyperPPにはサイアザイド系利尿薬が用いられる。症候性の場合には,原因疾患を治療し血清カリウム値を適正に保つ。

【治療上の一般的注意&禁忌】

HyperPPの発作時やHypoPPのカリウム補正時には,高カリウム血症による心停止に注意を要する。

▶治療の実際

【発作時】

〈HypoPP〉

一手目 〈経口投与可能な場合〉アスパラカリウム散50%(L-アスパラギン酸カリウム)25〜50mEqを30分おきに投与

二手目 〈嘔吐などにより経口投与不能な場合,処方変更〉生理食塩水500mL+塩化カリウム20mEqを250mL/時で持続点滴

〈HyperPP〉

発作が軽度の場合は経過観察。発作開始時に炭水化物食を摂取する。

重大な心電図の変化があるときはカルシウム製剤の投与を行う。

一手目 カルチコール注8.5%(グルコン酸カルシウム)10~20mLを2~5分かけて静注

【発作予防】

一手目 ダイアモックス250mg錠(アセタゾラミド)1回1錠1日2~3回(朝・夕食後または毎食後)

二手目 〈処方変更〉HypoPP:アルダクトンA 50mg錠(スピロノラクトン)1回1錠1日2回(朝・夕食後),またはケーサプライ600mg錠(塩化カリウム)1回1錠1日2回(朝・夕食後),HyperPP:フルイトラン2mg錠(トリクロルメチアジド)1回1錠1日3回(毎食後)

▶専門家へのコンサルト

病型診断は必ずしも容易ではないので,筋チャネル病の専門家へのコンサルトが必要である。遺伝性PPは全身麻酔時の悪性高熱のリスクが高いため,術前には麻酔科医へのコンサルトが必要である。

【参考資料】

▶ 厚生労働科学研究費 難治性疾患等政策研究事業 「希少難治性筋疾患に関する調査研究」班:筋チャネル病 遺伝性周期性四肢麻痺(指定難病115) 非ジストロフィー性ミオトニー症候群(指定難病114) 診療の手引き(案). 第2版.
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/syounin_03.pdf

久留 聡(国立病院機構鈴鹿病院脳神経内科/院長)


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