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バーター(Bartter)症候群[私の治療]

登録日: 2024.10.24 最終更新日: 2025.11.12

野津寛大 (神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野教授)

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▶治療の実際

【軽度】

電解質の補正を行う。

〈カリウム補充〉

一手目 アスパラカリウム300mg錠(L-アスパラギン酸カリウム)1回1~3錠1日3回(毎食後),ただし血清カリウム値が3.0mEq/Lに達しないときはさらに増量

〈マグネシウム補充(低マグネシウム血症を認める場合)〉

一手目 アスパラ配合錠(L-アスパラギン酸カリウム・L-アスパラギン酸マグネシウム)1回1~3錠1日2~3回(食後)

二手目 〈一手目が処方できない場合,処方変更〉酸化マグネシウム250mg錠(酸化マグネシウム)1回1~2錠1日2~3回(食後),ただし下痢症状を認めるときは減量

【中等度】

上述の電解質の補正に加え,イブプロフェンによる治療を行う(保険適用外)。

一手目 ブルフェン100mg・200mg錠(イブプロフェン)1回1錠1日2~3回(食後)

▶偶発症・合併症への対応

幼児期以降においても,感冒時には容易に脱水や低カリウム血症の悪化をきたし,輸液療法や入院加療が必要になることがしばしばある。また,成長障害,低身長を伴うことが多く,電解質の補正のみで改善しない場合は,成長ホルモン分泌不全を呈していることがあり,成長ホルモン補充療法が必要なことがある。さらに,その頻度は不明であるが,軽度の精神発達遅滞を伴うことがあるとされる。同じく頻度は不明であるが,QT延長症候群の合併を認めることがあるが,電解質の補正により速やかに改善するとされている。どの病型も末期腎不全へと進行する可能性がある。

▶非典型例への対応

軽症例では,無症状で血液検査で偶然発見されることもある。低カリウム血症,代謝性アルカローシスを呈する例では,遺伝子診断による確定診断を行う。一方,すべての病型において末期腎不全へと至り,腎代替療法が必要となる可能性があることにも留意する。重症の4型BSでは,イブプロフェンも含めたすべての治療に抵抗性を示し,臨床症状のコントロールができない場合がある。その際は救命のための両側腎摘出術が必要となる可能性がある。

▶ケアおよび在宅でのポイント

BS患者は塩分の濃い食物を好む傾向にある。しかし,それはナトリウムの尿中への喪失を補うための行為であり,基本的には食塩制限の必要はなく,欲しがる分を摂取させてよいとされている。また,倦怠感,頭痛,易疲労感,多飲多尿,夜間排尿などのいわゆる不定愁訴の訴えが多く,加えて感冒時は極端に活動性が落ちる。時に精神疾患と診断されることさえあるが,これらは原疾患に由来した症状の可能性が高く,それらの症状に対する家族や周囲の理解が必要である。

▶専門家へのコンサルト

確定診断には遺伝学的検査が必要であり,コンサルトを検討する。また,電解質補充に難渋する場合や,電解質補充のみで臨床症状の改善を認めない場合もコンサルトを推奨する。

野津寛大(神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野教授)


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