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QT延長症候群[私の治療]

登録日: 2024.04.24 最終更新日: 2025.11.12

大野聖子 (国立循環器病研究センターメディカルゲノムセンター研究部長)

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【治療上の一般的注意&禁忌】
〈注意〉

薬剤によるQT延長は,心筋活動電位の再分極を担うカリウムイオンチャネルであるhERGチャネルをブロックすることによって生じる。hERGチャネルブロック作用は,抗不整脈薬のみならず抗菌薬や向精神薬,抗アレルギー薬にもあるため,これらの薬剤を投与する際には,心電図によるQT時間の確認が必要である。

〈禁忌〉

無症状で無治療の症例に対するICD植込みは,植込みによる不利益が大きいため,禁忌とされている。

▶治療の実際

【急性期】

TdPの抑制・再発予防が基本である。

一手目 :マグネゾール注(硫酸マグネシウム水和物・ブドウ糖)30~40mg/kgを5~10分間で静注し,さらに1~5mg /分で持続点滴

二手目 :〈一手目に追加〉インデラル注(プロプラノロール塩酸塩)1回2~10mg(徐々に静注)

三手目 :〈徐脈時〉一時的ペーシング

【慢性期】

QT延長作用のある薬剤を控えるなどの生活指導に加え,β遮断薬を中心としたTdP抑制のための内服治療を要する。

一手目 :ナディック30mg錠(ナドロール)1回1~2錠1日1回(朝食後),またはインデラル10mg錠(プロプラノロール塩酸塩)1回1~3錠1日3回(毎食後)

二手目 :〈先天性QT延長症候群2型および3型の場合,一手目に追加〉メキシチール100mgカプセル(メキシレチン塩酸塩)1回1カプセル1日3回(毎食後)

三手目 :〈低カリウム時,血清カリウム値≧4.0mEq/Lを目標に〉アスパラカリウム300mg錠(L-アスパラギン酸カリウム)1回1~3錠1日3回(毎食後)

▶専門家へのコンサルト

先天性QT延長症候群は遺伝性疾患のため,患者本人のみならず家族も罹患している可能性がある。家族歴を聴取するとともに,必要な場合には遺伝専門外来へ紹介する。

【文献】

1) 日本循環器学会, 他:遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017年改訂版). 2018.
https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/

大野聖子(国立循環器病研究センターメディカルゲノムセンター研究部長)


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