【治療上の一般的注意&禁忌】
〈注意〉
薬剤によるQT延長は,心筋活動電位の再分極を担うカリウムイオンチャネルであるhERGチャネルをブロックすることによって生じる。hERGチャネルブロック作用は,抗不整脈薬のみならず抗菌薬や向精神薬,抗アレルギー薬にもあるため,これらの薬剤を投与する際には,心電図によるQT時間の確認が必要である。
〈禁忌〉
無症状で無治療の症例に対するICD植込みは,植込みによる不利益が大きいため,禁忌とされている。
▶治療の実際
【急性期】
TdPの抑制・再発予防が基本である。
一手目 :マグネゾールⓇ注(硫酸マグネシウム水和物・ブドウ糖)30~40mg/kgを5~10分間で静注し,さらに1~5mg /分で持続点滴
二手目 :〈一手目に追加〉インデラルⓇ注(プロプラノロール塩酸塩)1回2~10mg(徐々に静注)
三手目 :〈徐脈時〉一時的ペーシング
【慢性期】
QT延長作用のある薬剤を控えるなどの生活指導に加え,β遮断薬を中心としたTdP抑制のための内服治療を要する。
一手目 :ナディックⓇ30mg錠(ナドロール)1回1~2錠1日1回(朝食後),またはインデラルⓇ10mg錠(プロプラノロール塩酸塩)1回1~3錠1日3回(毎食後)
二手目 :〈先天性QT延長症候群2型および3型の場合,一手目に追加〉メキシチールⓇ100mgカプセル(メキシレチン塩酸塩)1回1カプセル1日3回(毎食後)
三手目 :〈低カリウム時,血清カリウム値≧4.0mEq/Lを目標に〉アスパラカリウム300mg錠(L-アスパラギン酸カリウム)1回1~3錠1日3回(毎食後)
▶専門家へのコンサルト
先天性QT延長症候群は遺伝性疾患のため,患者本人のみならず家族も罹患している可能性がある。家族歴を聴取するとともに,必要な場合には遺伝専門外来へ紹介する。
【文献】
1) 日本循環器学会, 他:遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017年改訂版). 2018.
https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/
大野聖子(国立循環器病研究センターメディカルゲノムセンター研究部長)